派遣社員は福利厚生を受けられる?待遇格差で悩まないための全知識

派遣社員として働こうとしたとき、「正社員と派遣では、福利厚生の待遇に差があるのでは?」と気になるときがあると思います。

結論からお伝えすると、派遣社員は福利厚生を受ける権利があります。

本記事では、派遣社員と正社員の福利厚生の違いや、派遣社員が受けられる福利厚生の具体的な内容などをまとめました。

働きはじめてから「こんなばずではなかった」と後悔しないためにも、ぜひ最後までお読みください。

なお弊社では、派遣社員向けに多彩な福利厚生を用意しています。最新サービスとして「引越しサポート」も行っておりますので、興味のある方は下記のページをご覧ください。

派遣社員も福利厚生を受けられる

冒頭でお伝えしたとおり、派遣社員は福利厚生を受けられます。

ただし、受けられるのは「登録している派遣会社」の福利厚生であり、派遣先の福利厚生ではありません。

このため、派遣社員と派遣先の労働者を比較したときに「同じ職場で同じ仕事をしているのに、受けられる待遇が異なる」といったケースがあります。

その仕組みを解説するために、まずは福利厚生の概要についてお伝えします。

福利厚生とは

福利厚生とは、企業が労働者とその家族の生活を向上させるためにおこなう、「賃金の支払い以外」の取り組みのことです。

代表的なものとしては、「健康保険」「厚生年金保険」や「年次有給休暇」などが挙げられます。対象者となるのは、正社員やパートタイム労働者・派遣社員などを含むすべての労働者です。

なお、福利厚生には、下記2つの種類があります。

法定福利厚生法律で義務付けられている福利厚生
法定外福利厚生企業が任意で労働者へ提供する福利厚生

「法定福利厚生」は法律で内容が決められているため、企業ごとに違いがありません。一方で、「法定外福利厚生」は、企業が独自にルールを決められるため、企業によって内容が変わります。

以上により、派遣社員を含むすべての労働者は、自身が契約を結ぶ企業で設定された、「法定福利厚生」「法定外福利厚生」を受けることが可能です。

「派遣社員」と「派遣先の労働者」との福利厚生の違い

派遣社員と派遣先の労働者を比較した際に浮かび上がる福利厚生の違いは、労働者が契約を結ぶ企業の規定によって生まれます。

前述のとおり、「派遣社員は派遣会社」「派遣先の労働者は派遣先」のように、違った規定に従う必要があるからです。

そのため、派遣会社と派遣先の福利厚生に差があると、「同じ職場で同じ仕事をしているのに待遇が違う」といったことが起きます。

そこで、不合理な待遇差が発生しないことを目指し、2020年4月に「同一労働同一賃金」が導入されました。次で、その詳細を解説していきます。

「同一労働同一賃金」とは

同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

引用:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

「同一労働同一賃金」とは、同じ企業で同じ仕事をしている場合、契約形態によって賃金や待遇に不合理な差が生まれないようにする取り組みのことです。

どの雇用形態でも納得のいく待遇を受け、多様な働き方を自由に選択できることを目指し導入されました。

なお、この取り組みはすべての待遇を同じにするものではなく、「不合理な差が発生しないことを目指す」ものです。待遇差をなくすために、派遣会社が派遣先や派遣社員の状況などを見ながら調整をおこないます。

その調整の基準となるのが、次で解説する「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」といった2つの考え方(方式)です。

派遣社員の待遇差を解消するための2つの方式

出典:労働者派遣法第30条の4第1項第2号イに定める同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額に係る通知について|厚生労働省

派遣先均等・均衡方式派遣社員と派遣先の労働者との間に不合理な差が生まれないように、調整する
労使協定方式派遣会社と派遣社員の組織の間で協定を結んで、待遇を決定する

派遣社員の待遇差を解消する考え方として、上記2つの方式が定められています。

契約ごとに派遣先が変わる派遣社員は、「同一労働同一賃金」の考え方だけで、待遇差を解消することが難しいからです。

同じ業界でも、企業規模や地域によって賃金の相場が変化します。それを無視して派遣社員の賃金を「派遣先の正社員と同じ水準にする」と決めてしまうと、派遣先が変わるたびに収入が変わってしまい、安定した生活を送れません。

以上から、派遣会社が派遣社員の待遇を決める際は「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」から、ひとつを選択して調整することになっています。

なお、派遣会社は、派遣社員と契約を結ぶ前に、どの方式を採用しているかを説明しなければなりません。そのため派遣社員は、自分が納得できる待遇であるかを確認したうえで契約を結ぶことができます。

派遣社員と正社員の福利厚生の違いについては以下で解説していますので、併せて参考にしてください。

派遣社員が受けられる「法定福利厚生」9選

ここでは、法律で義務付けられている「法定福利厚生」の例として、以下の9つを紹介します。

  1. 労働者災害補償保険(労災保険)
  2. 雇用保険
  3. 健康保険
  4. 介護保険
  5. 厚生年金保険
  6. 健康診断
  7. 産前産後休業(産休)
  8. 育児休業(育休)
  9. 介護休暇

いずれも、派遣社員が受ける権利のある福利厚生です。

ただ、本記事で紹介する条件はあくまで一般的なルールであり、例外が設けられているケースがあります。そのため、実際に福利厚生を受ける際は、派遣会社に自身が対象者であるかどうかを確認してください。

種類1. 労働者災害補償保険(労災保険)

概要業務中や通勤中の事故などによって怪我をしたり病気にかかったりした際に、給付金が受けられる
該当する法令労働者災害補償保険法
対象者の条件労働者すべて

労働者災害補償保険(以下、労災保険)とは、業務中・通勤中に発生した事故による怪我や、業務上の理由でかかった病気などに対して必要な保険給付をおこない、社会復帰をサポートする制度です。

労働者を1人でも雇っている事業所に加入の義務があり、保険料は事業主が全額を負担します。対象者は、すべての労働者(=雇用形態を問わない)とされているので、派遣社員も含まれます。

参考:労働保険への加入について|厚生労働省

種類2. 雇用保険

概要失業した際などに給付金を受けられる
該当する法令雇用保険法
対象者の条件以下の2つを満たしている労働者
・31日以上の雇用見込みがある
・1週間の所定労働時間が20時間以上

労働者が失業した際などに給付金を支給したり、再就職の支援をおこなったりする制度「雇用保険」も福利厚生のひとつです。加入手続は事業者がおこないますが、保険料は事業主と労働者の両者で負担します。

なお、給付金を受け取る際は「再就職のための活動をしている」など、満たすべき要件がいくつかあります。雇用保険に加入したら必ず給付金を受け取れるというわけではないことを、あらかじめ知っておきましょう。

参考:雇用保険制度|厚生労働省

種類3. 健康保険

概要病気や怪我などをした際に、生活を維持するための給付金が受けられる
該当する法令健康保険法
対象者の条件「従業員数が101人以上の企業(※)」に勤務する以下の労働者
 (1)正社員
 (2)週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4/3以上の人
 (3)下記4つの条件を満たしている人
  1.週の所定労働時間が20時間以上
  2.月額賃金が8.8万円以上
  3.2ヵ月を超える雇用の見込みがある
  4.学生ではない
※2024年10月からは「従業員数が51人以上の企業」も対象

健康保険は、病気やケガなどをした際に給付金がもらえる医療保険制度です。民間の企業などに勤めている労働者と、その家族が加入できます。

保険料を負担するのは、被保険者と事業主の両者です。徴収した保険料は、加入者の医療費や健診費用などに充てられるので、病気や怪我をしたときの経済的な負担を軽減できます。

さらに、出産や病気などで働けなくなったときなども給付金を受け取れるため、派遣社員の生活を守れます。

参考:知っておきたい健康保険のはなし|全国健康保険協会

種類4. 介護保険

概要介護が必要と認定された場合、介護サービスを受けられる
該当する法令介護保険法
対象者の条件・65歳以上の人
・40歳〜65歳未満の健保組合・全国健康保険協会・市町村国保などの医療保険加入者

社会全体で介護を支えることを目的に創設された制度「介護保険」も福利厚生に含まれます。

保険料は事業者と被保険者で負担するため、満40歳(=40歳の誕生日の前日)になる日が属する月から、健康保険組合や国民健康保険などの保険料と一緒に徴収されます。

介護が必要になった際に適切なサービスを受けられるので、将来に備えることができる制度です。

参考:介護保険制度の概要|厚生労働省

種類5. 厚生年金保険

概要老後に年金を受け取れる
該当する法令厚生年金保険法
対象者の条件・1週間の所定労働時間および1月の所定労働日数が、正社員の4/3以上ある労働者
・下記3つの資格取得要件をすべて満たす人
 (1)週の所定労働時間が20時間以上あること
 (2)賃金の月額が8.8万円以上であること
 (3)学生でないこと

日本には、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険の2階建てで構成される(※)公的年金制度があります。これに含まれる「厚生年金保険」も、派遣社員が受けられる福利厚生です。

なお、公的年金制度とは、老後や事故などで障がいを負ったとき・家族が亡くなったときなどに給付金を支給し、暮らしを支え合う仕組みのことです。

その構成には、すべての20〜60歳が加入する「国民年金(1階建ての部分)」、条件を満たした会社員などが加入する「厚生年金保険(1階建ての部分)」があります。

厚生年金保険の保険料には、国民年金の保険料も含まれているため、国民年金だけに加入している人より受け取れる年金が増えます。

なお、保険料の負担は企業と労働者が折半する決まりです。

※ほかに、任意で加入できる「企業年金」「国民年金基金」もあります。

参考:日本の公的年金は「2階建て」|厚生労働省

種類6. 健康診断

概要会社の負担で、健康診断を受診できる
該当する法令労働安全衛生法
対象者の条件・期間の定めのない契約により使用される人
・1年以上使用されることが予定されている人
・更新により1年以上使用されている人
・1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の3/4以上である人 

派遣社員が利用できる福利厚生のなかには、健康診断も含まれます。労働安全衛生法の第六十六条で、下記のように規定されています。

(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。

引用:労働安全衛生法

ただし、すべての派遣社員が受診できるわけではなく、条件を満たす人が対象となるため注意しましょう。

種類7. 産前産後休業(産休)

概要出産予定日の6週間前〜産後8週間まで、休暇を取得できる
該当する法令労働基準法
対象者の条件すべての女性労働者

「産前産後休業」は、出産の前後に取得できる休業です(休暇)。労働基準法の第六十五条では、「産休」について下記のように規定されています。

(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

引用:労働基準法

この規定により、すべての女性労働者は「出産予定日の6週間前」から休暇を取得できます。また、派遣会社は、出産日の翌日から8週間までは労働者を就業させることができません。

ただし、産休中の給与の支給については企業の方針によって異なるため、取得する際は登録している派遣会社に確認してください。

参考:産前・産後休業を取るときは|一般財団法人女性労働協会

種類8. 育児休業(育休)

概要1歳未満の子どもを育てるために、休業できる
該当する法令育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
対象者の条件養育する子が1歳6ヵ月に達する日までに、労働契約が満了することが明らかでない労働者

育児休業も、福利厚生のひとつです。原則として「1歳未満」の子どもがいる場合に取得でき、保育所に入所できないなどの事情があれば、2歳まで延長できます。

さらに、2回に分割して取得可能なため、パートナーや派遣会社などと相談のうえ休業期間を調整できる点も魅力です。

また、2022年10月には、育休とは別に取得できる「出生時育児休業(産後パパ育休)」が創設されました。

本制度は、男性の育児休暇の取得を促進するもので、出産日から8週間以内に、4週間を限度として休暇を取得できます。

ただし、以下の条件に当てはまる労働者は、労使協定の締結によって対象外とされるケースがあるので注意が必要です。

  • 雇用された期間が1年未満の労働者
  • 1年(1歳以降の休業の場合は6ヵ月)以内に雇用関係が終了する労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者

参考:令和3(2021)年法改正のポイント|厚生労働省

種類9. 介護休暇

概要家族を介護するための休暇を取得できる
該当する法令育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
対象者の条件・要介護状態の配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫がいる労働者
・ただし、労使協定によって下記の労働者を対象外にできる
 ・入社6ヵ月未満の労働者
 ・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休暇は、要介護状態にある家族を介護・世話するために取得できる休暇です。

「介護休業」が介護と仕事の両立を支援する制度に対し、「介護休暇」は通院の付き添いなど短時間のサポートを支援することを目的とした制度です。

1日または時間単位で「年間5日」まで取得でき、要介護状態の家族が2人以上いる場合には「10日」が上限とされます。

法律では書面・口頭での申し出を可能としており、申請手続きのハードルが低い点が特徴です。ただ、労使協定を締結している場合は、以下の労働者が対象外となるため確認が必要です。

  • 入社6ヵ月未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

参考:介護休業制度|厚生労働省

以上のように、法律で義務付けられている法定福利厚生の一例を紹介するだけでもいくつかあるので、どこに着目すればわからないことがあると思います。

派遣会社を選ぶ際に福利厚生を比較するポイントは以下の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

派遣社員が受けられる「法定外福利厚生」10選

派遣会社によっては、企業が任意で労働者へ設定する「法定外福利厚生」も受けられます。その具体例として、下記があります。

No.分類福利厚生の内容
1住宅関係・住宅手当の支給
・社員寮の提供
・住宅ローン補助金の支給
・引越し補助金の支給 など
2手当関係・通勤にかかる交通費の支給
・リモートワーク補助の支給
・退職金の支給
・役職手当の支給 など
3慶弔関係・結婚休暇
・結婚祝い金の支給
・忌引き休暇
・見舞金の支給 など
4子育て関係・出産祝い金の支給
・企業内保育所の整備
・ベビーシッターの手配 など
5休暇関係・誕生日休暇
・リフレッシュ休暇
・結婚記念日などのアニバーサリー休暇 など
6健康関係・ストレスチェックの実施
・カウンセラーの配置
・人間ドック、がん検診などの受診
・予防接種の実施 など
7スキルアップ関係・各種講座の受講料の補助
・書籍購入費の補助
・資格取得の祝い金 など
8施設利用関係・宿泊施設の割引
・レジャー施設の割引
・スポーツクラブの会員費の補助 など
9食事関係・社員食堂の設置
・カフェスペースの設置
・オフィスでの飲み物やお菓子の提供 など
10その他・自社商品の割引購入 など

法定外福利厚生は、労働者にとって魅力的な待遇を用意し、働く環境を整えたり労働意欲を向上したりするものです。派遣会社によって内容が多彩なので、希望に近い待遇で働ける環境をぜひ探してみてください。

なお、弊社では派遣社員に向けて「資格取得の費用補助」「充実休暇サポート」など、さまざまな福利厚生を用意しています。最新のサービスとして「引越しサポート」も行っておりますので、興味があれば下記から詳細をご覧ください。

まとめ:派遣社員も福利厚生を受けながら安心して働こう

本記事では、派遣社員の方が受けられる福利厚生を紹介しました。

福利厚生は、労働者がより働きやすい環境を整えるため企業が設定するものです。法律で定められたものもあれば、企業が独自に決めたものもあります。

派遣社員としてより良い環境で働くため、この機会に「どのような福利厚生を受けられたら、自分が働きやすいか」を考えてみましょう。

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