「有給休暇が年に5日しかもらえない…これって普通なの?」正社員として働くみなさんのなかには、このように感じている方もいるのではないでしょうか。有給休暇は労働者の権利ですが、会社によっては取得しづらい雰囲気だったり、付与日数が少なかったりするケースも存在します。
この記事では、正社員の有給休暇に関する疑問や悩みを、法律の観点から労働者としてできる対策まで、幅広く解説します。自身の権利を守り、より働きやすい環境を手に入れるための一歩を踏み出すためにも、ぜひ最後までお読みください。
有給休暇が5日しか付与されないケースはどのような状況?
入社半年後の正社員には、原則として10日の有給休暇が付与されます。では、なぜ正社員なのに有給が5日しかないという状況が生まれるのでしょうか?考えられるケースはいくつかあります。
まず考えられるのは、入社後6ヵ月未満であることです。有給休暇は、入社後6ヵ月が経過し、一定の出勤率を満たした場合に初めて付与されます。入社間もない場合は、有給休暇が付与されていない可能性があります。また、出勤率が8割に満たない場合も、可能性として挙げられます。有給休暇の付与条件として、全労働日の8割以上出勤していることが必要です。欠勤や遅刻が多い場合、有給休暇が付与されない、または日数が減る可能性があります。
まれに、会社が法律を誤解していたり、意図的に有給休暇を少なくしたりするケースも存在するため、自身の状況を確認して原因を探ってみましょう。
年次有給休暇とは?
年次有給休暇(以下、有給休暇)とは、労働基準法で定められた労働者の権利です。一定期間継続して勤務した労働者に対して、心身のリフレッシュや私的な用事を済ませるために、賃金が保障された休暇を与える制度です。
(年次有給休暇)
引用:労働基準法|e-Govポータル
第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
具体的には、以下の条件を満たす労働者に有給休暇が付与されます。
- 6ヵ月以上継続勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
この2つの条件を満たす労働者には、原則として10日間の有給休暇が付与されます。その後、勤続年数に応じて有給休暇の日数が増加していきます。
有給休暇は、労働者の生活の質を向上させ、過労を防止するために重要な制度です。しかし、実際には、有給休暇を取得しづらい状況や、会社が法律を遵守していないケースも存在します。そこで、次の章では、有給休暇に関する企業の義務について詳しく見ていきましょう。
企業には有給取得の「時季指定」義務がある
企業は、年10日の年次有給休暇が付与される労働者に対して、5日について取得する時季を指定することが義務付けられています。 これは、有給休暇の取得率が低い現状を改善し、労働者の健康とワークライフバランスを向上させることを目的としています。
この年5日の取得義務は、すべての企業に適用されます。ただし、対象となるのは、年10日以上の有給休暇が付与される労働者が、5日以上の有給休暇を取得していない場合です。
重要なのは、労働者の意思を尊重し、一方的に有給休暇を消化させるようなことがないようにすることです。例えば、会社全体で特定の日に有給取得を推奨する「計画年休制度」を導入する場合でも、労働者の個別事情を考慮し、柔軟に対応する必要があります。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
有給休暇の取得を阻む要因と対策
有給休暇は労働者の権利であるにも関わらず、実際には取得しづらいと感じている方もいるかもしれません。有給休暇取得を阻む要因とその対策について、会社と個人の両方の視点から考えてみましょう。
会社の要因と対策
人手不足の場合
慢性的な人手不足により、有給休暇を取得すると業務が回らなくなるという状況があります。対策として業務の効率化、人員の増強、業務の標準化など、根本的な人手不足の解消に取り組む必要があると考えられます。
取得しづらい雰囲気がある場合
上司や同僚が有給休暇を取得しないため、自分も取得しづらいと感じる場合があります。経営層や管理職が率先して有給休暇を取得し、取得を推奨するメッセージを発信することで、職場の雰囲気を変える必要があります。
業務の属人化の場合
特定の担当者しか業務内容を把握していないため、その人が休むと業務が滞ってしまうというケースでは、業務の標準化、マニュアル作成、複数担当制の導入などにより、業務の属人化を解消する必要があります。
個人側の要因と対策
周囲への遠慮がある場合
自分が休むことで、同僚に負担をかけてしまうのではないかと遠慮してしまう場合があります。自分の業務をきちんと整理し、同僚に引き継ぎやすいように準備することで、有給休暇を取得しやすくなります。
業務の抱え込みをしている場合
自分が抱えている業務が多すぎるため、休むことができないと感じる場合があります。そのようなときは、上司に相談し業務の分担や優先順位の見直しをおこなうことで、業務の負担を軽減することができます。
取得方法がわからない場合
有給休暇の申請方法や、取得する際の注意点などがわからず、躊躇してしまう場合があります。対策としては、会社の就業規則や、人事担当者に確認し、有給休暇の取得方法を理解することが重要です。
有給休暇取得を阻む要因は、会社と個人の両方に存在します。それぞれの要因を理解し、対策を講じることで、より有給休暇を取得しやすい環境を作ることができます。
有給休暇に関するトラブルを相談できる窓口
もし、有給休暇に関して会社との間でトラブルが発生した場合、1人で悩まずに、以下の相談窓口を利用することを検討してください。
総合労働相談コーナー(厚生労働省)
全国各地の労働局や労働基準監督署に設置されており、労働問題に関する相談を受け付けています。専門の相談員が、法律や制度に関するアドバイスや、解決に向けた情報提供を行ってくれます。電話や面談での相談が可能です。
労働基準監督署
労働基準法違反の疑いがある場合、労働基準監督署に申告することができます。労働基準監督署は、会社への調査や指導をおこない、労働者の権利を保護する役割を担っています。
弁護士
法的な専門家である弁護士に相談することも有効です。弁護士は、個別の状況に応じて、法的なアドバイスや交渉、訴訟などのサポートを提供してくれます。
労働組合
会社に労働組合がある場合は、労働組合に相談することもできます。労働組合は、労働者の権利を守るための団体であり、会社との交渉や団体交渉などを通じて、問題解決を支援してくれます。
これらの相談窓口は、労働者の権利を守るための重要な存在です。不安があれば遠慮なく活用し、状況を改善するためのサポートを受けましょう。
まとめ:有給休暇は権利と理解して積極的に活用しよう
この記事では、正社員なのに有給が5日しかない現実に直面した方に向けて、有給休暇に関する情報を幅広く解説してきました。有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、心身のリフレッシュや私的な用事を済ませるために重要な制度です。企業は、労働者に対して年5日の有給休暇を取得させることが義務付けられており、違反した場合には罰則が科せられる可能性があります。
有給休暇は、単に休むだけでなく、自分自身を成長させたり、大切な人との時間を過ごしたり、社会に貢献したりするための貴重な機会です。有給休暇は、あなたの権利です。 積極的に活用して、より充実した生活を送りましょう。