「正社員=月給制」というイメージが強いかもしれませんが、実は時給制の正社員という働き方も存在します。この記事では、時給制の正社員という働き方について、そのメリット・デメリット、有給休暇の扱いなど詳しく解説します。正社員でありながら時給制で働いている方、これから時給制の正社員として働くことを検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
時給制正社員とは?
冒頭でお伝えしたとおり正社員という雇用形態は、必ずしも月給制であるとは限りません。では、時給制の正社員は、月給制の正社員と何が違うのでしょうか?
時給制正社員の定義と特徴
時給制正社員とは、雇用期間に定めがない(無期雇用)という正社員の定義を満たしつつ、給与が時間単位で計算される働き方です。つまり、働いた時間に応じて給与が支払われるため、月によって収入が変動する可能性があります。
例えば、契約社員やパート・アルバイトの場合は、雇用期間が定められている(有期雇用)ことが一般的ですが、時給制正社員は無期雇用である点が異なります。また、社会保険や雇用保険といった福利厚生も、ほかの正社員と同様に適用されます。
月給制との違いとメリット・デメリット
時給制と月給制の主な違いは、給与の計算方法と安定性です。
月給制は、毎月一定の金額が支払われるため、安定した収入を得ることができます。しかし、残業時間が多かったり、休日出勤があったりしても、固定給であるため、割増賃金が支払われない場合もあります(固定残業代制を除く)。
一方、時給制は、働いた時間に応じて給与が支払われるため、残業時間や休日出勤が多い月は収入が増えます。しかし、逆に、会社の業績が悪化して労働時間が短縮されたり、個人的な都合で欠勤したりすると、収入が減ってしまう可能性があります。
▼時給制正社員のメリット
- 働いた時間に応じて給与が増える
- 残業代がきちんと支払われる
- 自分のペースで働きやすい
- 労働時間を調整しやすい場合がある
▼時給制正社員のデメリット
- 月によって収入が変動する
- 祝日が多い月などは収入が減る可能性がある
- 月給制に比べて、経済的な安定感に欠ける
このように、時給制と月給制にはそれぞれメリットとデメリットがあります。どちらの給与体系が自分に合っているか、よく検討することが大切です。
時給制正社員の有給休暇はどうなる?
正社員として働くうえで、有給休暇は重要な権利の1つです。時給制正社員の場合、有給休暇の取得や給与の計算方法について、どのようなルールがあるのでしょうか?
有給休暇の付与条件と日数
労働基準法では、雇用日から6ヵ月間継続して勤務し、その間の全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、有給休暇を付与することが義務付けられています。
(年次有給休暇)
引用:労働基準法|e-Govポータル
第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
これは、正社員、契約社員、パート・アルバイトなど、雇用形態に関わらず適用されます。
業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。
引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
時給制正社員も、この条件を満たせば、有給休暇を取得することができます。付与される有給休暇の日数は、勤続年数と週の所定労働時間によって異なります。
週の所定労働時間が30時間以上、週の所定労働日数が5日以上の場合(一般的な正社員)
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
週の所定労働時間や日数が少ない労働者に対して、上記の表よりも少ない日数の有給休暇を付与する「比例付与」という制度があります。比例付与の日数は、労働時間や日数に応じて細かく定められています。
週所定労働日数4日で、1年間の所定労働日数が169~216日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
週所定労働日数3日で、1年間の所定労働日数が121~168日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
週所定労働日数2日で、1年間の所定労働日数が73~120日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
週所定労働日数1日で、1年間の所定労働日数が48~72日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
有給休暇中の賃金計算方法
時給制正社員が有給休暇を取得した場合、有給休暇中の賃金は、労働基準法(第三十九条)で以下のいずれかの方法で計算されます。
- 通常の賃金をもとに計算する
- 平均賃金をもとに計算する
- 健康保険法の標準報酬日額をもとに計算する
どの計算方法を採用するかは、会社の就業規則に定められています。有給休暇を取得する際は、事前に会社の就業規則を確認し、賃金の計算方法や申請方法について確認しておくことが大切です。
時給制正社員の求人を探す際のポイント
時給制正社員の求人は、一般的な正社員の求人と比べて少ない傾向にあります。しかし、探し方によっては、自分に合った求人を見つけることができます。
▼求人を探す際のポイント
- 雇用条件(雇用形態、給与体系、勤務時間、休日など)を確認する
- 仕事内容や必要なスキルを確認する
- 会社の雰囲気や社風を調べてみる
- 面接で疑問点を解消する
求人サイトの活用
求人サイトでは、雇用形態や給与体系を絞り込んで検索することができます。「正社員」「時給制」などのキーワードで検索してみましょう。また、特定の業界や職種に特化した求人サイトもあります。例えば、医療系の求人サイトでは、医療事務や看護助手などの時給制正社員の求人が掲載されていることがあります。
企業ホームページのチェック
求人サイトに掲載されていない場合でも、企業のホームページに直接求人情報が掲載されていることがあります。興味のある企業があれば、ホームページをチェックしてみましょう。
時給制正社員で働くことを成功させるために
時給制正社員という働き方は、自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働きたい方にとって、魅力的な選択肢となります。しかし、月給制とは異なる給与体系であるため、注意すべき点もあります。
労働時間と収入のバランスを考える
時給制であるため、働いた時間に応じて収入が変動します。安定した収入を得るためには、月ごとの労働時間をある程度一定に保つことが重要です。
例えば、月の生活費を20万円と想定した場合、時給1,500円であれば、月に約133時間働く必要があります(20万円÷1,500円/時間≒133時間)。
収入を安定させるためには、日々の労働時間を記録し、月ごとの労働時間を把握しましょう。シフト制の場合は、希望する労働時間になるように、できるだけシフトを調整することも大切です。また、残業や休日出勤が可能な場合は、積極的に活用して収入を増やす方法もあります。
スキルアップで時給アップを目指す
時給制の場合、スキルアップすることで時給が上がる可能性があります。会社によっては、資格取得や研修参加を支援してくれる制度があるため、積極的に活用しましょう。業務に関連する資格を取得することで、専門知識やスキルを証明できたり、社内外の研修に参加することで、新しい知識やスキルを習得することができたりします。また、書籍やインターネットを活用して、自己学習することも有効です。
キャリアプランを明確にする
時給制正社員として働くことは、あくまでキャリアの通過点であると考えることもできます。将来的にどのようなキャリアを築きたいのか、明確なキャリアプランを持つことが大切です。
まずは数年後の目標を設定し、その目標を達成するために必要なスキルや経験を洗い出しましょう。その後に、自分の強みや弱みを分析し、どのような仕事が自分に合っているのかを考えます。そうしたら業界の動向や企業の情報を収集し、将来のキャリアプランに役立てましょう。
会社とのコミュニケーションを密にする
時給制正社員として働くうえで、会社とのコミュニケーションは重要です。給与や労働時間、有給休暇など、疑問や不安な点があれば、すぐに上司や人事担当者に相談しましょう。労働時間や仕事内容など、自分の希望があれば、積極的に会社に伝えることも大切です。また、会社の業績や経営状況を把握し、自分の働き方に反映させましょう。
まとめ:時給制正社員という働き方を理解し、賢く活用しよう
この記事では、時給制正社員という働き方について、その定義、メリット・デメリットなどを詳しく解説しました。時給制正社員は、月給制とは異なる給与体系であるため、注意すべき点もありますが、自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働きたい方にとって、魅力的な選択肢となります。
この記事を参考に、時給制正社員という働き方を正しく理解し、自分のキャリアプランに合った働き方を見つけてください。そして、時給制正社員として働くことを成功させるために、積極的に行動し、充実したキャリアを築いていきましょう。