アルバイトから正社員へのステップアップは、給与や待遇の向上などいくつかのメリットがあります。そのなかでも特に気になるのが「有給休暇」ではないでしょうか? アルバイト時代にはなかった有給休暇が、正社員になるとどれくらいもらえるのか、いつから取得できるのか、どのように計算されるのか、疑問に思う方も多いはずです。
この記事では、アルバイトから正社員になることを検討している方に向けて、有給休暇に関するさまざまな疑問を解消します。有給休暇に関する不安を解消し、安心して正社員としてのスタートを切るためにも、ぜひお読みください。
知っておくべき有給休暇の基本
まず、有給休暇とはどのような制度なのか、その基本的な部分を確認しておきましょう。
有給休暇とは、労働者が心身のリフレッシュを図るために、賃金が支払われる休暇のことです。労働基準法によって定められた労働者の権利であり、一定の条件を満たせば、正社員だけでなく、パートやアルバイトにも付与されます。
▼有給休暇の目的
- 日常の業務から離れ、休息や旅行などを通じて心身をリフレッシュすることで、労働意欲の向上や生産性の維持を図る
- 病気や怪我の治療、家族の介護、自己啓発など、労働時間外にしかできない活動をおこなう時間を確保し、生活の質を高める
- 仕事とプライベートの調和を促進し、より豊かな人生を送ることを支援する
有給休暇は、労働者の権利として法律で保障されており、会社は以下のように労働者が有給休暇を取得することを妨げてはなりません。
- 有給休暇の申請を拒否すること
- 有給休暇を取得した労働者に対して不利益な扱いをすること(減給、降格、解雇など)
- 有給休暇の取得を抑制するような雰囲気を作ること
これらの行為は、労働基準法違反となる可能性があります。会社は、労働者が有給休暇を自由に取得できるような環境を整備する義務があります。
アルバイトと正社員の有給休暇はどう変わる?
アルバイトと正社員では、有給休暇の付与条件や日数に違いがあります。具体的にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
アルバイトの有給休暇
アルバイトでも、以下の2つの条件を満たせば有給休暇が付与されます。
- 継続勤務年数:6ヵ月以上
- 出勤率:全労働日の8割以上
有給休暇の日数は、週所定労働日数と継続勤務年数によって異なります。労働時間が短いパート・アルバイトの場合、比例付与という形で、正社員よりも少ない日数となることが一般的です。例えば、週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下の場合、以下の表にもとづいて有給休暇の日数が決まります。
週所定労働日数4日で、1年間の所定労働日数が169~216日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
週所定労働日数3日で、1年間の所定労働日数が121~168日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
週所定労働日数2日で、1年間の所定労働日数が73~120日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
週所定労働日数1日で、1年間の所定労働日数が48~72日の場合
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
正社員の有給休暇
正社員の場合も、有給休暇の付与条件はアルバイトと同様で、6ヵ月以上の継続勤務と全労働日の8割以上の出勤が必要です。有給休暇の日数は正社員の方が多く、労働基準法では、週の所定労働時間が30時間以上、または週の所定労働日数が5日以上の労働者に対して、以下の表にもとづいて有給休暇を付与することと定められています。
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
例えば、入社して6ヵ月経過すると10日の有給休暇が付与され、その後は1年ごとに有給休暇の日数が増えていきます。勤続6年6ヵ月以上になると、年間20日の有給休暇が付与されることになります。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
アルバイトから正社員になった場合の注意点
アルバイトから正社員になった場合、有給休暇の付与日数がリセットされるのか、それともアルバイト期間の勤務年数が引き継がれるのかが問題となります。原則として、正社員としての雇用契約が新たに開始しても、有給休暇の対象期間は引き継がれます。では、アルバイトから正社員になった場合、有給休暇の計算方法はどうなるのでしょうか? 法律の原則と、例外的な取り扱いについて解説します。
雇用契約の切り替えと有給休暇の付与日数
有給休暇の起算日は、アルバイトとしての雇用契約が開始された時点から引き継いで計算されます。ただ、アルバイト期間の取得日数は、当時の勤務状況を考慮して決まり、正社員としての勤務が開始したあとは正社員として有給休暇の日数を決定することになります。そのため、それぞれの有給休暇の取得日数をわけて把握することが大切です。
有給休暇の「時季指定義務」
労働基準法によって、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられています。
第三十九条
⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
引用:労働基準法|e-Govポータル
これは、労働者の健康を守りワークライフバランスの実現を目的としたものです。
- 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して適用される
- 会社は、労働者の希望を聞きながら、計画的に有給休暇を取得させる必要がある
- 労働者が自ら5日以上の有給休暇を取得した場合、会社は有給休暇の取得義務を履行したものとみなされる
上記によって、会社全体で有給休暇の取得率を向上を目指します。なお会社は、業務の繁忙期を避けて、計画的に有給休暇を取得させることができます。一方で労働者は、事前に有給休暇の取得日を知ることができるため、計画的な休暇を取りやすくなります。
有給休暇に関するよくある質問と回答
有給休暇について、よくある質問とその回答をまとめました。
Q1.アルバイト期間中に取得できなかった有給休暇は、正社員になったらどうなりますか?
アルバイト期間中に取得できなかった有給休暇は、時効を迎えれば消滅します。ただし、会社の就業規則や労働協約に特別な定めがある場合は、引き継ぐことができる場合があります。
Q2. 有給休暇の申請を会社に拒否された場合、どうすればいいですか?
会社が正当な理由なく有給休暇の申請を拒否することは、労働基準法違反となる可能性があります。まずは、会社に理由を確認し、話し合いをしても納得できない場合は、労働基準行政の相談窓口などに相談することをおすすめします。
Q3.有給休暇を取得すると、給料は減りますか?
有給休暇は、賃金が支払われる休暇です。有給休暇を取得しても、給料が減ることはありません。
まとめ:有給休暇を賢く利用してワークライフバランスを充実させよう
アルバイトから正社員になることで、有給休暇という新たな権利を得られます。有給休暇は、心身のリフレッシュや生活の充実のために、重要な制度です。有給休暇の付与日数や計算方法については、会社の就業規則を確認することが大切です。もし、不明な点があれば、人事担当者や労働組合に相談してみましょう。有給休暇を賢く利用して、仕事とプライベートのバランスを取り、充実したワークライフバランスを実現しましょう。計画的に有給休暇を取得することで、仕事のパフォーマンスを向上させ、より豊かな人生を送ることができます。