「正社員として入社したものの、1年で辞めるのは甘えなのではないか」そう悩んでいませんか?近年、早期離職は珍しいことではなくなりましたが、それでも将来への不安は拭えないものです。この記事では、正社員を1年で辞めることが本当に「甘え」なのかについて解説します。ぜひ、この記事を参考に、自分にとって最善の道を見つけてください。
正社員を1年で辞めるのは本当に「甘え」? 早期離職の現状を理解する
「石の上にも三年」ということわざがあるように、かつては「入社したら最低3年は勤めるべき」という考え方がありました。しかし、終身雇用制度が崩壊し、個人のキャリア観が多様化する現代において、この考え方は必ずしも当てはまりません。実際に、厚生労働省の調査によると、新規学卒就職者の離職率は以下のとおりです。
事業所規模 | 高校 | 大学 |
5人未満 | 62.5% | 59.1% |
5~29人 | 54.4% | 52.7% |
30~99人 | 45.3% | 42.4% |
100~499人 | 37.1% | 35.2% |
500~999人 | 31.5% | 32.9% |
1,000人以上 | 27.3% | 28.2% |
データ出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
つまり、1年で辞めることは決して珍しいことではなく、むしろ、自身のキャリアを積極的に考える人が増えていることのあらわれともいえます。
早期離職を選ぶ人が増えている理由
なぜ早期離職を選ぶ人が増えているのでしょうか?考えられる理由としては、労働環境への不満、キャリアアップ志向の強まりなどが挙げられます。また、長時間労働やハラスメントなど、劣悪な労働環境に耐えかねて退職を選ぶ人も少なくありません。さらに、スキルアップやキャリアアップを目指し、より良い条件の企業へ積極的に転職する人も増加傾向にあります。
早期離職に対する社会的な認識も変化しつつあります。かつては「根性がない」「我慢が足りない」とネガティブなイメージを持たれることがあった早期離職ですが、近年では、個人のキャリア選択の自由や、企業側の問題点を指摘する声もあります。もちろん、安易な気持ちで退職することは避けるべきですが、自身の成長や幸福を追求するために、早期離職を選択することも、1つの合理的な選択肢として認められるようになってきました。
1年で正社員を辞めるメリット
正社員を1年で辞めることは、メリットもあればデメリットもあります。ここから、それぞれの側面を詳しく見ていきましょう。まずは、1年で正社員を辞めるメリットについて紹介します。
ミスマッチを早期に解消できる
入社後に「この会社は自分に合わない」と感じた場合、1年以内であれば、まだキャリアへの影響を最小限に抑えながら、ミスマッチを解消することができます。例えば、プログラミングの仕事だと思って入社したら、実際はテスターばかりだったという場合、早めに転職することで、本当にやりたいプログラミングの仕事に就くチャンスをつかむ可能性をアップできます。
新しいキャリアに挑戦できる
早期離職は、未経験の業界や職種に挑戦するチャンスでもあります。特に、20代であれば、ポテンシャル採用の可能性も期待でき、将来の可能性を広げることができます。例えば、営業職からエンジニア職への転身を希望する場合、若いうちに挑戦することで、キャリアチェンジのハードルを下げることができます。
ストレスから解放される
劣悪な労働環境や人間関係の悩みから解放され、心身の健康を取り戻すことができます。精神的な負担が大きい職場に長く留まることは、うつ病などのリスクを高める可能性があります。早期に退職することで、心機一転、新たなスタートを切ることができます。
第二新卒として扱ってもらえる可能性がある
新卒で入社後1〜3年以内の離職者は「第二新卒」として扱われることがあります。第二新卒は、社会人としての基礎的なスキルやビジネスマナーを身につけているため、企業からの評価も比較的高く、転職活動を有利に進めることができます。
1年で正社員を辞めるデメリット
ここからは、正社員を1年で辞めるデメリットを紹介します。
転職活動で不利になる可能性がある
企業によっては、早期離職を「忍耐力がない」「計画性がない」と判断し、採用を見送る場合があります。特に、明確な理由やスキルアップの目的がない場合、ネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。
年収が下がる可能性がある
経験やスキルが少ない状態で転職する場合、年収が下がる可能性があります。特に、未経験の業界や職種に挑戦する場合、給与水準が低い企業からスタートすることになる場合もあります。
スキルアップの機会を逃す可能性がある
1つの企業で長く働くことで得られる専門的なスキルや知識を習得する機会を逃してしまう可能性があります。特に、専門性の高い職種の場合、短期的な離職を繰り返すことで、キャリアアップが難しくなることも考えられます。
周囲からの理解を得られない可能性がある
親や友人など、周囲の人々から「甘い」「我慢が足りない」と批判される可能性があります。特に、保守的な考え方を持つ人からは、理解を得られない場合があります。
1年で辞める決断をする前に確認すべき5つのポイント
1年で辞めることを検討する際には、感情的な判断だけでなく、客観的な視点を持つことが重要です。ここでは、後悔しないための5つの確認ポイントを紹介します。
辞めたい理由を明確にする
なぜ辞めたいのか、具体的な理由を明確にしましょう。単に「つまらない」「飽きた」といった感情的な理由だけでなく、「同業のなかでも給与が低い」「残業が多い」「人間関係が悪い」など、客観的な理由を洗い出すことが重要です。理由を明確にすることで、転職活動で同じ過ちを繰り返さないようにすることができます。
転職先で何をしたいのか明確にする
転職によって何を実現したいのか、具体的な目標を設定しましょう。「給与を上げたい」「ワークライフバランスを改善したい」「やりがいのある仕事に就きたい」など、具体的な目標を持つことで、転職活動の軸を定めることができます。
自分のスキルや経験を客観的に評価する
自分の強みや弱みを把握し、転職市場で自分の価値を客観的に評価しましょう。自己分析ツールや転職サイトなどを活用することで、さまざまな情報を得ることができます。
転職市場の状況を把握する
自分が希望する業界や職種の求人状況、給与水準、求められるスキルなどを把握しましょう。転職サイトなどを活用することで、最新の転職市場の情報を収集することができます。
家族や信頼できる人に相談する
自分の状況や考えを家族や信頼できる人に相談し、客観的なアドバイスをもらいましょう。第三者の意見を聞くことで、自分の考えの偏りや盲点に気づくことができます。
1年で辞めても転職を成功させるための7つの秘訣
1年で正社員を辞めることは、必ずしもキャリアの終わりではありません。適切な準備と戦略があれば、転職を成功させ、より良いキャリアを築くことができます。
退職理由をポジティブに変換する
面接で退職理由を聞かれた際、ネガティブな理由をそのまま伝えるのは避けましょう。例えば、「人間関係が悪かった」という理由であれば、「よりチームワークを重視する環境で働きたい」とポジティブな表現に変換することが重要です。企業の採用担当者は、応募者の成長意欲や将来性を見ています。退職理由をポジティブに伝えることで、向上心や適応能力をアピールすることができます。
スキルアップをアピールする
短期間であっても、業務を通じて得たスキルや経験を具体的にアピールしましょう。例えば、「営業職として、顧客開拓のスキルを身につけた」「プログラミングの基礎を習得した」など、具体的な成果を伝えることが重要です。また、自主的に学習したことや、資格取得なども積極的にアピールしましょう。企業は、即戦力となる人材を求めています。スキルアップをアピールすることで、採用担当者に貢献できる人材であることを印象付けることができます。
熱意とポテンシャルを伝える
経験が少ない分、熱意とポテンシャルをアピールすることが重要です。なぜその企業で働きたいのか、その企業でどのような貢献をしたいのか、具体的な目標を伝えましょう。例えば、「御社の〇〇という事業に共感し、自分の〇〇というスキルを活かして貢献したい」など、具体的なビジョンを伝えることが重要です。企業は、将来性のある人材を求めています。熱意とポテンシャルを伝えることで、採用担当者に将来への期待感を持たせることができます。
企業研究を徹底する
応募する企業について、事業内容、企業理念、社風などを徹底的に調べましょう。企業のWebサイトやニュース記事、社員の口コミサイトなどを参考に、企業の情報を収集することが重要です。企業研究を通じて、自分がその企業で働くイメージを具体的に持つことができ、面接での質問にもスムーズに答えることができます。
面接対策を万全にする
面接は、企業に自分をアピールする絶好の機会です。よく聞かれる質問に対する回答を事前に準備しておきましょう。自己PR、志望動機、退職理由など、定番の質問に対する回答を事前に準備しておくことで、自信を持って面接に臨むことができます。模擬面接などを活用し、実践的な練習を重ねることも効果的です。
在職中に転職活動をおこなう
経済的な不安を軽減するため、できる限り在職中に転職活動をおこないましょう。退職後に転職活動をおこなう場合、経済的なプレッシャーから、焦って企業を選んでしまう可能性があります。在職中に転職活動をおこなうことで、じっくりと企業を選ぶことができ、より自分に合った企業を見つけることができます。
まとめ:1年で辞める決断を後悔しないために
正社員を1年で辞めることは、決して「甘え」ではありません。しかし、安易な気持ちで決断することは避け、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、慎重に判断する必要があります。もし、あなたが1年で辞めることを検討しているのであれば、この記事で紹介したポイントを参考に、後悔しないための決断をしてください。そして、転職を成功させるために、積極的に行動し、より良いキャリアを築いてみてください。