派遣社員はバイト・パートと掛け持ちしてOK?失敗を防ぐ4つのポイント

派遣社員として働きながら、ほかの派遣やバイト・パートの仕事と掛け持ちをしても大丈夫なの?」といった疑問を抱くことはありませんか?

結論をお伝えすると、派遣社員が掛け持ちをすることは問題ありません。本記事では、その理由や掛け持ちをするメリット・デメリット、注意点などを解説します。

派遣社員の掛け持ちでよくある失敗を避けるためにも、ぜひ参考にしてください。

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派遣社員が仕事を掛け持ちすることは基本的に「問題がない」

法律的な観点でいうと、派遣社員がほかの派遣の仕事やアルバイト・パートと掛け持ちをすることは、何ら問題がありません。

企業と労働者が安心して副業・兼業に取り組めるようルールを明確化した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、以下と記載されています。


副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされており、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが適当です。


副業・兼業を禁止している企業や一律許可制にしている企業は、まずは、原則副業・兼業を認める方向で就業規則などの見直しを行い、労働者が副業・兼業を行える環境を整備しましょう。

引用:副業・兼業の促進に関する
ガイドライン|厚生労働省

また、関係する法令などの規定を踏まえ、就業規則の例を示した「モデル就業規則」に記載されている内容は、以下のとおりです。

(副業・兼業)

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

引用:モデル就業規則|厚生労働省

以上を踏まえると、派遣社員が掛け持ちをすることは法律で禁止されておらず、むしろ政府が副業・兼業を後押ししていると考えられます。

派遣社員が仕事の掛け持ちをすることが難しい2つのケース

前述のとおり、派遣社員が仕事を掛け持ちすることは基本的に問題がありません。ただ、以下2つの理由から、掛け持ちをすることが難しいケースがあります。

  1. 就業規則で禁止されている
  2. 労働時間の合計に制限が設けられている

それぞれの詳細を見ていきましょう。

ケース1. 就業規則によって掛け持ちが禁止されている

1つ目のケースは、派遣会社が定める「就業規則」によって、掛け持ちが禁止されている場合です。

実は前述の「モデル就業規則」では、企業が労働者の副業・兼業を禁止・制限できる条件として以下を挙げています。

2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。


① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

引用:モデル就業規則|厚生労働省

つまり、「仕事に支障が出る」「企業の利益を害する」などを理由に、派遣会社の就業規則で掛け持ちを禁止されるケースがあるというわけです。

この規則に反してしまうと何らかの罰則が課されることがあるため、注意しなければなりません。契約書を読んでもルールがわからなければ、登録している派遣会社に確認しましょう。

ケース2. トータルの労働時間に制限が設けられている

同じ派遣会社から複数の派遣先を紹介してもらう際は、トータルの労働時間が上限に達し、掛け持ちが難しくなる場合があります。

「労働基準法」では、企業(使用者)が労働者に命じられる労働時間を「1日8時間」「1週間に40時間」と定めているからです。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

②使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

引用:労働基準法

規定した労働時間を超える場合は、企業と労働者の間で協定を結び、時間外の労働に対して「割増賃金」を支払わなければなりません。

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

引用:労働基準法

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

それ以上働かせたい場合には、雇い主と労働者の間で協定を結び、時間外の労働には「割増賃金」を支払わなければなりません。

引用:労働基準法

以上から、派遣会社は、派遣社員1人あたりの労働時間が規定内に収まるよう管理しています。

そのため、派遣社員として働きながら「1日8時間」「1週間に40時間」を超えて働くのであれば、別の勤務先を探す必要があります。

週40時間以上の労働にともなう法的な問題やリスクなどについては、以下の記事で解説しているので参考にしてください。

派遣社員が仕事の掛け持ちをする3つのメリット

派遣社員が仕事の掛け持ちをするメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

  1. 収入がアップする
  2. キャリアアップにつながる
  3. 人脈を広げられる

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

メリット1. 収入がアップする

掛け持ちをするメリットとして、収入がアップすることが挙げられます。収入源が増えれば、得られる給料も増加するためです。

アルバイト・パートでも掛け持ちはできますが、実際のところ派遣社員の方が時給が高めです。

2024年3月度 募集時平均時給

  • 派遣社員:1,635円(※1)
  • アルバイト・パート:1,188円(※2)

(※1)参考:2024年3月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査|ジョブズリサーチセンター

(※2)参考:2024年3月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査|ジョブズリサーチセンター

少しでも高い時給で掛け持ちができれば、収入が増えて安定した生活を送ったり趣味を楽しんだりできます。

ただし、「収入が増える=労働時間が増えている」というケースはあるので、働きすぎて体調を崩さないよう注意してください。

メリット2. キャリアアップにつながる

掛け持ちをすると、多様な経験を積める点も魅力です。

ひとつの勤務先に勤める場合は、人手不足など特別な事情がない限り、まったく違う業務を同時に担当するケースが少ないです。

一方で派遣社員は、IT系と物流倉庫のように違うジャンルの業務を同時期に担当したり、契約期間の満了後に別の派遣先へ移ったりできるため、さまざまなキャリアを積めます。

また、複数の仕事を経験すると、自分に向いている仕事・向いていない仕事が見えてくるため、将来、転職をする際にも活かせます。

メリット3. 人脈を広げられる

複数の仕事に就けば関わる人が多くなり、人脈を広げられる点もメリットです。多彩な経験・経歴を持った人と交流できるので、自分の知見を深められる良さもあります。

同じ企業に就職しても、部署のメンバーや取引先などと関わりを持てますが、その範囲を広げる機会はそこまで多くありません。

掛け持ちは交流範囲を自分から広げていけるため、より多くの人と接点を持てます。

派遣社員が仕事の掛け持ちをする2つのデメリット

派遣社員が仕事を掛け持ちにすることで、いくつかのメリットがありますが、以下の2つのデメリットも生じます。

  1. スケジュール調整のハードルが上がる
  2. プライベートと仕事の両立が難しくなる

ここでは、それぞれについて詳しく見ていきます。

デメリット1. スケジュール調整のハードルが上がる

1つ目のデメリットは、スケジュール調整の難易度が上がることです。

派遣社員として掛け持ちをする場合、すべての出勤日を自分で管理しなければなりません。

ひとつの勤務先のシフトをメモしておくだけでも手間がかかるなか、複数の勤務先の出勤日を正確に把握することは、思いのほか大変なものです。

スケジュール帳にメモしたりスマートフォンのアプリを活用したりと、漏れなく管理することが求められます。

デメリット2. プライベートと仕事の両立が難しくなる

掛け持ちをすると労働時間が長くなるため、プライベートと仕事の両立が難しくなるケースがあります。一般的に、労働時間は、規定を大幅に超えることがないよう会社が管理するものです。

ですが、複数の勤務先を掛け持ちをする場合は、自分で出勤日数や時間を調整しなければならず、管理が行き届かないことがあります。

1日は24時間と決まっているので、労働時間が長くなればプライベートに使える時間が短くなるのが自然です。

「仕事が楽しい」というのであれば問題はありませんが、意図せず仕事中心の生活にならないようにするためには、時間の使い方を工夫する必要があります。

派遣社員が掛け持ちでよくある失敗を防ぐ4つのチェックポイント

ここで、掛け持ちにチャレンジする派遣社員が「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、あらかじめチェックしておくべき項目を以下の4つ紹介します。

  1. 確定申告の対象者に該当しないか?
  2. 社会保険に加入できるか?
  3. どの勤務先で雇用保険に加入するか?
  4. トータルの労働時間に問題がないか?

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

ポイント1. 確定申告の対象者に該当しないか?

まずは、自分が確定申告の対象者であるかどうかを確認しておくことが大切です。「確定申告」とは、1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税などの金額を計算して確定させる手続きのことです。

派遣会社に労働者としての籍があれば、所得税を確定する手続きとして「年末調整」をおこなってもらえます。

ただ、年末調整の対象となるのは、12月に在籍している、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した社員やパート・アルバイトだけです。

この申告書は1つの勤務先にしか提出できないため、12月に在籍していなかったりほかの職場から得た収入があったりする場合は、確定申告が必要になるというわけす。

国税庁の公式サイトでは「給与所得者で確定申告が必要な人」として、以下のとされています。

  1. 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  2. 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
  3. 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
引用:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

実際は、個人の状況によって必要な対応が異なるので、自分が確定申告をすべきか迷う場合は、管轄の税務署や市町村役場などの公共機関に相談しましょう。

税について相談できる窓口例

ポイント2. 社会保険に加入できるか?

仕事の掛け持ちをすると、「社会保険」に入れないケースがあります。なお、ここでの社会保険は、以下の「医療保険」「公的年金」に該当する保険を指します。

分類概要保険料の負担
社会保険医療保険(健康保険・介護保険):病気・ケガに備える
※介護保険は、40歳以上であれば原則加入する
公的年金(国民年金・厚生年金):年齢を重ねたり障害を負ったりしたときに備える
※国民年金は、20歳以上60歳未満であれば原則加入するが、保険料を自分で直接納める必要はない
会社と折半
労働保険・労災保険:仕事上の病気・ケガに備える
・雇用保険:失業時のリスクに備える
・労災保険:会社が負担
・雇用保険:会社が従業員より多く負担

社会保険は、企業に雇用されている従業員が加入対象です。

2024年4月現在は、従業員数101人以上の企業(特定適用事業所)に勤務している労働者のうち、決められた要件を満たす人が加入対象者とされています。

出典:社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

社会保険に加入できる要件

  • 規定の企業規模を満たしている
  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

勤務先の規模が規定以下であったり、掛け持ちによってひとつの職場における週の労働時間や月額賃金が減少したりすると、要件を満たせず社会保険に加入できないケースが出てきます。

その場合「国民健康保険」「国民年金」に入り、保険料を自分で負担することになるので、掛け持ちする際は、どの勤務先で社会保険に加入するか想定しておくことがおすすめです。

ポイント3. どの勤務先で雇用保険に加入するか?

どの勤務先から、「雇用保険」に加入するかについても前もって考えておきましょう。雇用保険は、労働者の生活や再就職の援助をおこなうことなどを目的とした制度で、下記の要件を満たしていると加入できます。

雇用保険の適用事業所に雇用される次の労働条件のいずれにも該当する労働者の方は、原則として全て被保険者となります。

 1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
 2. 31日以上の雇用見込みがあること

引用:Q&A~事業主の皆様へ~|厚生労働省

前述の社会保険は複数の職場で加入できますが、雇用保険の加入ができるのは1つの職場だけです。同じ労働者の加入の届出が複数あると役所から連絡を受けるため、重複の心配をする必要はほとんどありません。

ただし、勤務先に自身の状況を共有できていないと、思いがけず未加入のまま過ごしてしまうリスクがあります。

掛け持ちをして、雇用保険に未加入のまま過ごしてしまうケース例

  1. A社で派遣社員として勤務を始め、雇用保険に加入する
  2. その後、B社でも勤務を開始し、A社・B社で掛け持ちを始める
  3. 雇用保険に加入していたA社を退社する
  4. B社に「A社を退社した」と伝え忘れる
  5. B社ですべき加入手続きをおこなえず、雇用保険が未加入のままになってしまう

勤務先の担当者が、掛け持ちしている派遣社員の雇用保険の加入状況をすべて把握することは難しいので、勤務状況に変化があればできるだけ早く連絡しましょう。

ポイント4. トータルの労働時間に問題がないか?

自分の労働時間に問題がないかどうかも、確認しておくことがおすすめです。

通常は、企業が労働時間を把握するので、リスクがある場合は「本人や部署に忠告する」などの適切な措置がなされます。

しかし、掛け持ちをしている場合は、自分で労働時間を管理しなければなりません。

厚生労働省では、月の残業時間の合計が45時間を超えると、健康障害のリスクが徐々に高まると注意喚起しています。

出典:過重労働による健康障害を防ぐために|厚生労働省

健康を害すると、プライベートや趣味を楽しめないだけでなく生活そのものを脅かしてしまうため、働きすぎには注意しましょう。

掛け持ちのほかにも派社員が収入をアップする方法はある

派遣社員が収入アップを目指す場合、掛け持ちのほかにも毎月の給料を増やす方法があります。

「研修制度がある」「評価制度が明確になっている」など、スキルを磨いたり交渉ができたりする派遣先を選択することで、手取りを増やすことが可能だからです。

具体的には、以下の方法が挙げられます。

  1. スキルや資格を活かせる仕事を探す
  2. 派遣会社に昇給できないか交渉する
  3. 正社員を目指す
  4. 時給が高い地域へ引っ越す

掛け持ちによって収入を増やせることは魅力的ですが、自分のキャパを超えて働きすぎると健康を害するリスクがあります。

そのため、限られた時間を有効活用して収入を増やしたいのであれば、派遣社員として1つの勤め先で働きながら収入アップを目指すことも検討してみましょう。

派遣社員の平均時給や手取りを増やすコツについては下記の記事でお伝えしているので、興味のある方は併せてご覧ください。

まとめ:派遣やバイト・パートとの掛け持ちを成功させよう

派遣社員がほかの派遣やバイト・パートの仕事と掛け持ちすることは、法律的に問題がありません。

ですが、実際は業務に支障が出たり会社の利益を守ったりするために、就業規則で掛け持ちを禁止しているケースがあります。

想定外のトラブルを起こさないためにも、派遣会社やほかの勤務先に相談しながら検討しましょう。

なお弊社では、「スキルアップしたい」「収入を増やしたい」という意欲のある方をサポートしています。

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