「有給休暇って取りづらい」そう感じている正社員の方は少なくないのではないでしょうか。この記事では、正社員の有給休暇日数の平均、有給休暇取得率の実態について、最新のデータをもとに詳しく解説します。また、有給休暇を取りやすい職場環境を作るためのヒントや、取得義務化の背景についても深掘りしていきます。有給休暇に関する疑問や不安を解消し、より積極的に有給休暇を活用するためにも、ぜひ参考にしてください。
正社員の有給休暇日数
実際に正社員は年間でどれくらいの有給休暇が付与され、どれくらい取得しているのでしょうか。厚生労働省が発表している「令和6年就労条件総合調査」によると、労働者1人あたりの平均有給休暇取得率は62.1%、平均取得日数は17.6日となっています。しかし、この数字はあくまで平均値であり、企業規模や業界、職種によって異なります。
【企業規模別】有給休暇の取得状況
企業規模別に有給休暇の取得率を見てみると、企業規模が大きいほど高い傾向にあります。
- 1000人以上規模の企業:65.6%
- 300~999人規模の企業:61.8%
- 100~299人規模の企業:62.1%
- 30~99人規模の企業:57.1%
大企業の方が、有給休暇の取得が進んでいると考えられます。また、人員に余裕があるため、一方で、中小企業では、有給休暇を取得しにくい状況にある場合があります。
【業界別】有給休暇の取得状況
業界によっても、有給休暇取得率に差があります。取得率が高い業界としては、以下などが挙げられます。
- 複合サービス業:74.8%
- 電気・ガス・熱供給・水道業:73.7%
- 製造業:65.8%
- 医療、福祉:65.3%
一方、取得率が低い業界としては、以下などがあります。
- 宿泊業、飲食サービス業:49.1%
- 教育、学習支援:54.4%
- 卸売業、小売業:55.5%
- 建設業:57.5%
有給休暇の取得率が低い原因とは?
有給休暇取得率が低い原因は、企業側の要因と労働者側の要因が複合的に絡み合っています。
▼企業側の要因例
- 人員不足
- 業務の属人化
- 上司や同僚の理解不足
- 有給休暇を取りにくい雰囲気
▼労働者側の要因例
- 業務が忙しくて休めない
- 同僚に迷惑をかけたくない
- 評価に影響するのではないかという不安
- 休むことに罪悪感を感じる
- 有給休暇の申請方法がわからない
これらの要因を解消するためには、企業と労働者が協力して、有給休暇を取りやすい環境を作っていく必要があります。
有給休暇とは?
ここで、有給休暇の基礎知識をあらためておさらいしてみましょう。労働基準法第三十九条には、以下の条件を満たす労働者に対して、有給休暇を付与する義務が定められています。
(年次有給休暇)
引用:労働基準法|e-Govポータル
第三十九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
- 入社日から6ヶ月間継続して勤務している
- 全労働日の8割以上出勤している
この条件を満たす労働者には、勤続年数に応じて有給休暇が付与されます。
▼有給休暇の付与日数(正社員の場合)
継続 勤務 年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与 日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
上記のように、勤続年数が増えるほど有給休暇の付与日数も増えていきます。ちなみに、アルバイトやパートタイム労働者の場合は、所定労働時間や所定労働日数に応じて有給休暇の付与日数が比例付与されます。
有給休暇の「時季指定義務」とは?
2019年4月、労働基準法が改正され、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されました。
第三十九条
⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
引用:労働基準法|e-Govポータル
この制度は、以下などを目的として導入されました。
- 労働者のワークライフバランスの実現
- 労働者の心身の健康維持
- 労働生産性の向上
これまで、日本では有給休暇の取得率が低いことが課題となっており、その背景には、長時間労働や過重労働、有給休暇を取りにくい風潮などがありました。有給休暇取得義務化は、企業に対して、従業員の有給休暇取得を促進するための積極的な取り組みを促すとともに、労働者自身が有給休暇を取得しやすい環境を作ることを目的としています。
時季指定義務のポイント
時季指定義務のポイントは以下のとおりです。
- 対象者:年10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員、正社員など)
- 取得義務日数:年5日以上
- 取得方法:労働者が自ら取得するか、企業が計画的に取得させる(計画年休制度)
企業は、従業員が年5日以上の有給休暇を取得できるように、就業規則の整備や、有給休暇取得計画の作成、取得状況の管理などをおこなう必要があります。また、労働者自身も、積極的に有給休暇を取得し、ワークライフバランスの実現に努めることが重要です。
計画年休制度とは?
計画年休制度とは、労使協定を結ぶことで、企業が従業員の有給休暇の取得日を事前に指定できる制度です。この制度を活用することで、企業は、業務に支障がない範囲で、従業員の有給休暇取得を計画的に進めることができます。
計画年休制度を導入する際には、以下の点に注意する必要があります。
- 労使協定を締結すること
- 従業員の意見を尊重すること
- 年間5日以上の有給休暇は、従業員の自由に取得できるようにすること
計画年休制度は、有給休暇取得率の向上に効果的な手段の1つですが、従業員の意向を無視した一方的な運用は、労働者の不満を招く可能性があるため、慎重に進める必要があります。
有給休暇を取得するメリットとは?
有給休暇は、労働者の権利であるだけでなく、取得することでさなままなメリットがあります。
労働者側のメリット
- 心身のリフレッシュ:旅行や趣味、休息など、自分の好きなことに時間を使うことで、心身をリフレッシュできる
- ストレス軽減:仕事から離れることで、ストレスを軽減し、心身の健康を維持できる
- モチベーション向上:リフレッシュすることで、仕事へのモチベーションを高め、生産性を向上できる
- 自己啓発:スキルアップのための学習や、資格取得のための勉強など、自己啓発に時間を使うことができる
- 家族との時間:家族との時間を増やし、絆を深めることができる
- 地域社会への貢献:ボランティア活動や地域イベントへの参加など、地域社会に貢献することができる
企業側のメリット
- 従業員のエンゲージメント向上:有給休暇を取得しやすい環境を作ることで、従業員のエンゲージメントを高めることができる
- 離職率の低下:従業員のワークライフバランスを支援することで、離職率を低下させることができる
- 生産性向上:従業員が心身ともに健康で働くことができるようになり、生産性を向上させることができる
- 企業イメージ向上:従業員のワークライフバランスを重視する企業として、企業イメージを向上させることができる
- 優秀な人材の確保:働きやすい企業としてアピールすることで、優秀な人材を確保することができる
有給休暇は、労働者にとっても企業にとっても、メリットのある制度です。積極的に活用し、より充実したワークライフバランスを実現しましょう。
まとめ:有給休暇を有効活用して、充実した毎日を!
この記事では、正社員の有給休暇日数の平均、有給休暇取得率の実態、有給休暇取得義務化の背景と目的、有給休暇取得を促進するための企業の取り組み事例、有給休暇を取得するメリットについて解説しました。有給休暇は、労働者の権利であり、積極的に活用することで、心身のリフレッシュ、ストレス軽減、モチベーション向上など、さまざまなメリットがあります。
企業は、従業員が有給休暇を取得しやすい環境を作るために、積極的に取り組む必要があります。労働者自身も、有給休暇の権利を理解し、積極的に取得することで、より充実した毎日を送ることができます。有給休暇を有効活用して、仕事もプライベートも充実させ、自分らしい生き方を実現しましょう。