「せっかくの有給消化中、少しでも収入を増やしたいけど、アルバイトってしてもいいの?」正社員として働くあなたがそう考えるのは、ごく自然なことです。まとまった休みを有意義に過ごしたい気持ちと、少しでもお金を稼ぎたいという思いは、決して矛盾するものではありません。
しかし、有給消化中のアルバイトは、いくつかの注意点を知っておかないと、後々トラブルに発展する可能性があります。この記事では、正社員が有給消化中にアルバイトをする際の注意点、メリット・デメリット、そして賢い働き方について解説します。「有給消化中のアルバイトに関する疑問や不安を解消したい」とお考えであれば、ぜひ参考にしてください。
有給消化中にアルバイトは原則OK?
結論、有給消化中にアルバイトをすることは法律で禁止されていません。有給休暇は、労働者が自由に使える権利とされているからです。しかし、会社によっては就業規則で副業を禁止している場合や、アルバイトの内容によっては問題になるケースも存在します。
以下の3つのポイントを必ず確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。
- 会社の就業規則を確認する
- アルバイトの内容が会社の信用を損なわないか確認する
- 退職予定の場合は、退職後の働き方に影響がないか確認する
会社の就業規則を確認する
まずは、会社の就業規則を確認しましょう。多くの企業では、副業に関する規定が設けられています。副業を禁止している場合、有給消化中のアルバイトも副業とみなされ、場合によっては懲戒処分の対象となる可能性もあります。
就業規則を確認する際は、以下の点に注目してください。
- 副業の定義
- 副業が許可される条件
- 副業が禁止されている業務
- 副業するにあたり必要な手続き
もし就業規則に副業に関する明確な記載がない場合は、人事担当者や上司に確認することをおすすめします。
アルバイトの内容が会社の信用を損なわないか確認する
たとえ就業規則で副業が認められていたとしても、アルバイトの内容によっては問題となる場合があります。具体的には、以下のようなケースです。
- 会社の顧客情報を不正に利用する
- 会社の技術情報を競合他社に漏洩する
- 会社のブランドイメージを損なうような活動をする
アルバイトをする際は、会社の業務と競合しないか、会社の信用を損なう可能性はないかなどを十分に考慮しましょう。
退職予定の場合は、退職後の働き方に影響がないか確認する
退職予定の場合、有給消化中のアルバイトが退職後の働き方に影響を与える可能性も考慮する必要があります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- アルバイト先が競合他社で、退職後に転職を考えている場合、競業避止義務に抵触する可能性がある
- アルバイトで得たスキルや経験が、退職後のキャリアプランに合わない
退職後のキャリアプランを考慮し、アルバイト先や業務内容を慎重に検討しましょう。特に、退職後に起業を考えている場合は、会社の知的財産権を侵害しないように注意が必要です。
有給消化中にアルバイトをするメリット・デメリット
有給消化中にアルバイトをすることには、メリットとデメリットが存在します。それぞれの側面を理解したうえで、自分にとって最適な選択をしましょう。
有給消化中にアルバイトをするメリット
1つ目のメリットは、アルバイトによって収入を増やすことです。まとまった休みを利用して、旅行や趣味など、普段できないことに使う資金を得られます。アルバイトを通じて、新しいスキルや経験を得ることも可能です。今まで経験したことのない職種に挑戦することで、自分の可能性を広げられます。また、いつもとは違う環境で働くことで気分転換になったり、心身のリフレッシュにつながったりして、その後の仕事へのモチベーション向上が期待できます。
長期休暇中は、社会とのつながりが薄れがちなため、アルバイトによって社会とのつながりを維持し孤独感を解消することも可能です。例えば、普段はデスクワーク中心の人が、カフェでアルバイトをすることで、接客スキルを磨いたり、新しいコミュニティに参加したりすることができます。
有給消化中にアルバイトをするデメリット
アルバイトをするデメリットとして、休息時間が減少し疲労が蓄積する可能性が挙げられます。無理な働き方は、体調を崩す原因にもなりかねません。また、就業規則に違反した場合や、アルバイトの内容が会社に不利益をもたらした場合、会社とのトラブルに発展する可能性もあります。さらに、アルバイトで得た収入によっては確定申告が必要なため、確定申告の手間や、税金の負担が増えることを考慮する必要があります。
有給消化中にアルバイトをする際の注意点
有給消化中にアルバイトをする際は、いくつかの点に注意する必要があります。
要件を満たすと社会保険に加入する必要がある
アルバイト先の労働時間や収入によっては、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する必要があります。社会保険の加入条件は以下のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヵ月を超えて働く予定がある
- 学生ではない
社会保険に加入すると、保険料を支払う必要が生じますが、医療費の自己負担額が軽減されたり、将来受け取れる年金額が増えたりするメリットもあります。
雇用保険は二重加入できない
雇用保険は、複数の会社で同時に加入することはできません。
Q6 複数の会社で働いている者の雇用保険の加入はどうすればよいのでしょうか。
同時に複数の会社で雇用関係にある労働者(それぞれの会社で雇用保険の加入要件を満たす場合)については、生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社でのみ加入していただくこととなります。
引用:Q&A~事業主の皆様へ~|厚生労働省
アルバイト先で雇用保険に加入することになった場合、本業の会社での雇用保険は資格喪失となります。そのため一般的には、本業の雇用保険を優先し、アルバイト先では雇用保険に加入しないという選択肢が考えられます。
確定申告が必要になる場合がある
アルバイト収入が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
1 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2 1か所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
(注) 給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
4 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
5 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
6 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
7 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人
引用:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるので、必ず期限内に申告しましょう。確定申告に必要な書類例は以下のとおりです。
- 源泉徴収票
- 身分証明書
- マイナンバーカード
確定申告の手続きがよくわからない場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
参考:【申告書の提出】|国税庁
アルバイト収入が20万円以下でも住民税の申告が必要な可能性がある
アルバイト収入が年間20万円以下の場合、所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要となる場合があります。住民税の申告手続きについては、お住まいの市区町村の税務課に確認しましょう。
有給消化中のアルバイトにおすすめの職種
有給消化中のアルバイトとしておすすめの職種は、自分のスキルや経験を活かせる仕事、または興味のある分野の仕事です。具体的には、以下のような職種が考えられます。
- 軽作業:引っ越し、倉庫内作業、イベントスタッフなど、体力を使う仕事ですが、高時給で短期間で稼ぎやすい
- ポイ活:アンケートモニター、覆面調査、データ入力など、自宅で手軽にできる
- スキルシェア:クラウドソーシングサイトなどを利用すれば、プログラミング、デザイン、ライティングなど、自分のスキルを活かせる
- デリバリー:デリバリーサービスは、自分の好きな時間に働きやすい
- 塾講師/家庭教師:学生時代の知識を活かして、子どもたちに勉強を教える
まとめ|有給消化中のアルバイトは計画的におこなおう
この記事では、正社員が有給消化中にアルバイトをする際の注意点、メリット・デメリット、そしておすすめの職種について解説しました。有給消化中のアルバイトは法律で禁止されていませんが、会社の就業規則やアルバイトの内容によっては問題となる場合があります。必ず事前に会社の就業規則を確認し、問題がないことを確認してからアルバイトを始めましょう。
有給消化中のアルバイトは、収入を増やしたり、スキルアップしたりするメリットがありますが、休息時間が減ったり、会社とのトラブルに発展したりするデメリットもあります。メリットとデメリットを理解したうえで、自分にとって最適な選択をしましょう。
有給休暇は、心身をリフレッシュするための大切な時間です。アルバイトに時間を使いすぎて、疲労困憊になってしまっては本末転倒です。自分の体調やスケジュールに合わせて、無理のない範囲でアルバイトを楽しみましょう。