かつては「正社員」という言葉は、安定や将来の保障を意味していました。しかし、終身雇用制度の崩壊、経済のグローバル化、そして多様な働き方の普及により、価値観は大きく変化しています。この記事では、キーワード「正社員になっても意味がない」という言葉の背景にある、現代社会における正社員のメリット・デメリットを検証します。後悔しない働き方を選択するためにも、参考にしてください。
「正社員になっても意味がない」といわれる5つの理由
「正社員になっても意味がない」といわれる背後には、社会構造の変化や、人々の価値観の多様化など、複合的な要因が存在します。ここでは、その主な理由を5つに絞り、詳しく解説します。
終身雇用制度の崩壊と雇用の不安定化
かつての日本企業は、新卒一括採用で社員を終身雇用し、年功序列で昇給・昇進させるのが一般的でした。しかし近年では、リストラや早期退職、非正規雇用の増加などが進み、「正社員だから安心」という考え方は過去のものとなりつつあります。実際に、厚生労働省の「令和5年 雇用動向調査結果の概要」によると、正社員の離職率は入職率を上回っています。
成果主義の導入
従来の年功序列制度では、年齢や勤続年数に応じて給与や役職が上がっていくため、能力や成果に関係なく、安定した収入を得ることができました。しかし近年では、成果主義を導入した企業が、個人の能力や成果に応じて評価する傾向があります。そのため、たとえ正社員であっても、成果を出せなければ昇給や昇進が難しく、収入が伸び悩むケースが増えています。
非正規雇用の待遇改善と多様な働き方の普及
以前は、非正規雇用は低賃金で不安定な働き方というイメージがありましたが、近年、同一労働同一賃金の原則が推進され、非正規雇用の待遇が改善されつつあります。また、フリーランスや副業など、多様な働き方が普及し、正社員にこだわらず、自分のライフスタイルや価値観に合った働き方を選択する人もいます。
ワークライフバランスの重視
かつての日本社会では、「仕事人間」という言葉が肯定的に使われるほど、仕事に多くの時間を費やすことが美徳とされていました。しかし、近年、ワークライフバランスを重視する人が増え、仕事だけでなく、プライベートな時間や自己実現のための時間も大切にするようになりました。正社員は、残業や休日出勤が多く、自由な時間が少ないため、ワークライフバランスを重視する人にとっては魅力的な働き方とはいえなくなっています。
正社員の責任と負担の増大
企業の競争激化にともない、正社員1人あたりの仕事量が増加し、責任や負担も大きくなっています。長時間労働や過労死といった問題も深刻化しており、精神的なストレスを抱える人も少なくありません。特に、中間管理職は、上司からのプレッシャーと部下からの突き上げに挟まれ、心身ともに疲弊しているケースも見られます。
正社員として働く4つのメリット
「正社員になっても意味がない」という意見がある一方で、正社員にはいくつかのメリットが存在します。ここでは、正社員として働くことのメリットを4つのポイントに絞って解説します。
安定した収入と福利厚生
正社員の最大のメリットは、やはり安定した収入と充実した福利厚生です。毎月決まった給与が支払われ、賞与や昇給の機会もあります。また、社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)が完備されており、万が一の病気やケガ、失業に備えることができます。特に、厚生年金は、将来の年金受給額に大きく影響するため、老後の生活設計を考えるうえで重要な要素となります。
社会的な信用とステータス
正社員は、社会的な信用度が高く、住宅ローンやクレジットカードの審査に通りやすいというメリットがあります。また、結婚や子育てなど、ライフイベントを円滑に進めるうえで有利に働くことがあります。特に、日本では「正社員=安定」というイメージが根強く残っており、社会的なステータスを重視する人にとっては、正社員は魅力的な働き方といえるでしょう。
キャリアアップの機会
多くの企業では、正社員に対して、研修制度や資格取得支援制度など、キャリアアップを支援する制度を用意しています。また、社内での異動や昇進の機会も多く、自分の能力や適性に合わせて、さまざまなキャリアパスを描くことができます。さらに、転職市場においても、正社員としての経験は高く評価されるため、将来的にキャリアチェンジを考えている人にとっても有利に働くことがあります。
雇用の安定性
非正規雇用と比較して、正社員は解雇されにくいというメリットがあります。労働契約法では、企業が正社員を解雇するためには、客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当と認められる必要があります。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
そのため、企業は簡単に正社員を解雇することができません。ただし、業績不振によるリストラや早期退職など、正社員であっても解雇されるケースがあることを覚えておきましょう。
正社員として働く4つのデメリット
正社員には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、正社員として働くことのデメリットを4つに絞って解説します。
時間的な制約と自由度の低さ
正社員は、勤務時間や勤務場所に制約があり、自由な時間を確保しにくいというデメリットがあります。残業や休日出勤が多く、プライベートな時間や趣味に費やす時間が限られてしまうことがあります。また、転勤や異動など、自分の希望に沿わない配置転換を命じられることもあり、生活の自由度が低いといえます。特に、ワークライフバランスを重視する人にとってはデメリットとなる可能性があります。
責任とプレッシャーの大きさ
正社員は、非正規雇用と比較して、責任が重く、プレッシャーも大きくなりやすいというデメリットもあります。目標達成のためのノルマや、プロジェクトの責任者としての役割など、精神的な負担が大きい仕事もあり、ストレスを抱える人も少なくありません。
人間関係のストレス
会社にはさまざまな人が集まっており、上司や同僚との人間関係に悩むこともあります。状況によっては、パワハラやセクハラなど深刻な問題に発展するケースもあり、精神的なストレスを抱える人もいます。特に、企業文化や人間関係が合わない場合、毎日会社に行くことが苦痛になり、離職を考える人もいます。
副業の制限
企業のなかには、正社員に対して副業を禁止または制限しているケースがあります。収入を増やしたい、あるいは自分のスキルを活かして別の仕事をしてみたいと思っても、会社の許可を得なければ、自由に副業をおこなうことができません。近年では、副業を解禁する企業も増えていますが、副業を制限する企業が一般的なため、正社員の自由な働き方を選択しにくい状況があります。
自分に合った働き方を見つける3つのステップ
正社員にはいくつかのメリットがあります。しかし、終身雇用制度の崩壊や、価値観の多様化などにより、正社員の価値観は大きく変化しており、正社員が必ずしも最適な働き方とはいえなくなっています。
重要なのは、自分にとって何が大切なのか、どんな働き方をしたいのかを明確にすることです。安定した収入や社会的な信用を重視するなら、正社員は依然として魅力的な選択肢です。一方、自由な時間やワークライフバランスを重視するなら、フリーランスや副業など、他の働き方も検討する価値があります。
自分に合った働き方を見つけるためには、以下の3つのステップを踏むことが重要です。
ステップ1:自己分析
自分の価値観、強み、弱み、キャリアプランなどを深く掘り下げて分析します。どんな仕事にやりがいを感じるのか、どんな生活を送りたいのか、将来の目標は何なのかなどを明確にすることで、自分に合った働き方を見つけるための土台を作ります。
ステップ2:情報収集
正社員、契約社員、派遣社員、フリーランスなど、さまざまな働き方について、メリット、デメリット、働き方、収入などを詳しく調べます。インターネットや書籍、セミナーなどを活用して、できるだけ多くの情報を集め、それぞれの働き方の特徴を理解することが重要です。
ステップ3:試行錯誤
実際に、インターンシップやアルバイト、副業などを通じて、さまざまな働き方を体験してみることをおすすめします。実際に体験することで、自分に合った働き方、合わない働き方を肌で感じることができ、後悔のない選択をすることができます。
まとめ:多様な働き方を理解し、自分らしいキャリアを築こう
「正社員になっても意味がない」という言葉は、現代社会における働き方の多様性を象徴する言葉といえるでしょう。正社員だけでなく、契約社員、派遣社員、フリーランスなど、さまざまな働き方があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。重要なのは、自分自身の価値観やライフスタイルに合わせて、最適な働き方を選択することです。この記事を参考に自己分析を深め、自分らしいキャリアを築いてください。