「やっと正社員として採用されたのに、試用期間中は時給制。これって普通なの?」とお考えではありませんか?正社員として採用されたものの、試用期間中は時給制という雇用条件に不安や疑問を感じている方は少なくありません。せっかくつかんだ正社員としての職を後悔することは、誰しも避けたいものです。この記事では、試用期間中の時給制について、法律的な側面から企業側の意図、そして労働者として知っておくべき権利まで解説します。
試用期間中の時給制は違法?
試用期間中の給与形態は、企業によって異なりますが、正社員と同様に月給制で支払われるケースもあれば、時給制、日給制など、さまざまな形態が存在します。試用期間中に時給制が適用される場合、企業側としては人件費が管理しやすいメリットが考えられます。しかし、労働者側から見ると、時給制は月給制に比べて収入が不安定になる、ボーナスや昇給の対象外になるなどのデメリットがあります。
最低賃金法は試用期間中でも適用される?
試用期間中であっても、最低賃金法は適用されます。 企業は、各都道府県で定められた最低賃金額以上の給与を支払う義務があります。
(最低賃金の効力)
第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。引用:最低賃金法第四条
もし、試用期間中の時給が最低賃金を下回る場合は、違法行為となります。
残業代は支払われる?
試用期間中であっても、残業代は支払われる必要があります。 労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて労働させた場合、企業は割増賃金(残業代)を支払う義務があります。割増賃金の計算方法は、以下のとおりです。
- 時間外労働:25%の割増賃金
- 深夜労働:25%以上の割増賃金
- 休日労働:35%以上の割増賃金
企業が残業代を支払わない場合は、労働基準法違反となります。ただし、割増賃金の計算は給与形態などによって計算式が異なります。そのため、就業規則に記載されている内容を事前に確認しておきましょう。
参考:労働基準法第三十七条
社会保険、雇用保険への加入義務は?
試用期間中であっても、一定の条件を満たせば、社会保険(健康保険・厚生年金)および雇用保険に加入する義務があります。
▼社会保険の加入条件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 雇用期間が2ヵ月を超える見込みがある
- 学生ではない
参考:従業員のみなさま 社会保険の加入条件やメリットについて|厚生労働省
▼雇用保険の加入条件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
これらの条件を満たす場合は、試用期間中であっても、企業は社会保険および雇用保険に加入させる必要があります。
有給休暇は付与される?
試用期間中であっても、労働基準法上の要件を満たせば、有給休暇が付与されます。有給休暇の付与要件は、以下のとおりです。
- 雇入れの日から6ヵ月継続勤務している
- 全労働日の8割以上出勤している
これらの要件を満たす場合、企業は労働者に対して、勤続年数に応じて有給休暇を付与する必要があります。例えば、6ヵ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員には、10日間の有給休暇が付与されます。
参考:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
試用期間とは?
試用期間とは、企業が従業員を正式採用する前に、その適性や能力を見極めるために設ける期間です。一般的には3ヵ月~6ヵ月程度が多いですが、企業の業種や職種、雇用形態によって異なります。
企業側の主な目的は以下のとおりです。
- 履歴書や面接だけでは判断できない、実際の業務遂行能力や職場への適応力を確認する
- 正式採用後に「思っていたのと違った」という事態を避け、採用コストを削減する
- 社風や企業文化に馴染めるか、他の従業員との協調性があるかなどを判断する
- 遅刻や欠席の頻度、仕事への取り組み姿勢などを観察する
試用期間中の法的地位
試用期間中の従業員の法的地位は、原則として正社員と同様です。労働基準法をはじめとする労働関連法規が適用され、不当な扱いを受けることはありません。ただし、試用期間は、企業が従業員の適性を評価するための期間です。つまり、企業は試用期間中に従業員を解雇できる権利を留保しているということです。しかし、この解雇権の行使は無制限ではありません。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる以下のような場合にのみ、解雇が認められます。
- 明らかに業務に必要なスキルや知識が不足しており、改善の見込みがない場合
- 会社の規則に違反する行為を繰り返し、改善が見られない場合
- 採用時に重要な経歴を偽っており、それが判明した場合
試用期間を設ける企業側のメリット・デメリット
企業側にとって、試用期間を設けることは、採用におけるリスクを軽減し、より適した人材を見極めるための有効な手段となります。しかし、以下のようなデメリットも存在します。
▼企業のメリット
- 採用ミスマッチの防止
- 適性を見極め人材の配置がしやすくなる
▼企業のデメリット
- 優秀な人材を逃す可能性がある
- 従業員のモチベーション低下
試用期間を利用する労働者側のメリット・デメリット
労働者側にとって、試用期間は、企業の実態を知り、自分に合った職場かどうかを見極めるための機会となります。しかし、不安定な雇用状況や低い給与水準など、不安要素も存在します。
▼労働者のメリット
- 自分に合った職場か見極める機会を得られる
- 合わなかった場合に退職を検討しやすい
▼労働者のデメリット
- 給与が低い場合がある
- 解雇される不安がある
試用期間中の解雇は認められる?
試用期間中の解雇は、正式採用後の解雇に比べて、認められる範囲が比較的広いと考えられています。しかし、企業は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合にのみ、解雇をおこなうことができます。単に「能力が不足している」「性格が合わない」といった主観的な理由だけでは、解雇は認められません。
解雇された場合の対応策
もし、試用期間中に不当な理由で解雇された場合は、以下のような対応策を検討しましょう。
- 解雇理由証明書を残しておく
- 解雇に至るまでの経緯や、業務遂行状況などを記録しておく
解雇は、労働者にとって大きな精神的苦痛をともないます。1人で悩まず、弁護士や労働組合などの専門家に相談し、解雇の有効性や今後の対応についてアドバイスを受けましょう。
試用期間中のトラブルをできるだけ防ぐ方法
雇用契約書の重要性
試用期間に関するトラブルを未然に防ぐためには、雇用契約書の内容を確認することが重要です。雇用契約書には、試用期間の期間、給与形態、労働時間、社会保険の加入条件、解雇条件など、重要な労働条件が記載されています。雇用契約書の内容に不明な点や疑問がある場合は、必ず企業に確認し、納得したうえで契約を結ぶようにしましょう。口約束だけでなく、書面で確認することが大切です。
給与、労働時間、解雇条件などを事前に確認する
雇用契約を結ぶ前に、以下の点について企業に確認しておくことをおすすめします。
- 試用期間の期間:試用期間はいつからいつまでか?
- 給与形態:時給制の場合、時給額、最低賃金を下回らないか?
- 労働時間:1日の労働時間、週の労働日数、残業の有無
- 社会保険・雇用保険の加入条件:加入条件を満たしているか?
- 有給休暇の付与:付与要件を満たしているか?
- 解雇条件:どのような場合に解雇される可能性があるか?
- 正社員登用制度:正社員登用の条件や実績
これらの点について事前に確認しておくことで、入社後のミスマッチを防ぎ安心して働くことができます。
交渉の余地はある?
試用期間中の労働条件について、企業との交渉は可能です。特に、時給額や労働時間、正社員登用制度などについては、自分の希望を伝え、交渉してみる価値があります。
交渉する際は、以下の点に注意しましょう。
- どのような条件で働きたいかを具体的に伝える
- なぜその条件を希望するのか、客観的な根拠を示す
- 誠意をもって交渉する
- 譲歩する姿勢も持つ
自分の希望をすべて通すことは難しい場合もあります。妥協点を探りながら、交渉を進めましょう。例えば、「〇〇の資格を持っているので、時給を検討してほしい」「〇〇のスキルを活かして、会社の業績に貢献したい」といったように、自分の能力や経験をアピールすることで、交渉を有利に進めることができます。
まとめ:試用期間を有効活用し、正社員への道を切り開こう
この記事では、試用期間中の時給制について、法律的な側面から企業側の意図、そして労働者として知っておくべき権利まで解説しました。試用期間は、企業と従業員がお互いを見極めるための期間です。労働者は、雇用契約書の内容を確認し、自分の権利を理解したうえで、試用期間を有効活用し、正社員への道を切り開いていきましょう。もし、試用期間中に不当な扱いを受けたり、解雇されたりした場合は、1人で悩まず、専門家や関係機関に相談し、適切な対応を取りましょう。