「正社員になったのに、退職金がない。これって普通なの?」そんな疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。現代においては、退職金制度がない企業も存在します。しかし、退職金は老後の生活を支える重要な資金源であるため、不安に感じるのも当然のことです。
本記事では、正社員なのに退職金がないケースは違法ではないのか、退職金がない企業で働くメリット・デメリット、そして老後資金を確保するための対策について、詳しく解説します。
退職金なしは違法? 法的な側面から解説
まず、気になるのは「正社員なのに退職金がないのは違法なのか?」という点です。結論からいうと、退職金制度は法律で義務付けられているものではありません。つまり、退職金制度を設けていない企業で働くこと自体は、違法ではないのです。
法律では、賃金や労働時間といった労働条件が明確に定められていますが、退職金に関する規定はありません。そのため、企業は退職金制度を設けるかどうか、また、設ける場合はどのような制度にするかを自由に決定できます。ただし、就業規則や労働契約書に「退職金制度がある」と明記されている場合は、企業は従業員に対して退職金を支払う義務が生じます。この場合、退職金が支払われない場合は違法となる可能性があります。
就業規則や労働契約書の確認が重要
重要なのは、自身の会社の就業規則や労働契約書を確認することです。これらの書類に退職金に関する規定があるかどうかを確認しましょう。
また、退職金制度がない場合でも、企業によっては退職金に代わる制度を設けている場合があります。この制度についても、就業規則や労働契約書を確認し、どのような制度が利用できるのかを把握しておきましょう。
退職金なしの企業はどれくらい存在する? 現状を把握する
退職金制度がない企業は、実際にはどのくらい存在するのでしょうか。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%です。つまり、それ以外の企業はなんらかの理由で退職金がないといえます。
また、従業員数が少ない企業ほど退職金制度がない割合が高くなっています。これは、中小企業では退職金を支払うための資金的な余裕がない場合や、従業員の流動性が高く、退職金制度の必要性が低いと考えられているためです。あくまで目安ですが、転職を検討する際は、企業の規模だけでなく、退職金制度の有無も確認するようにしましょう。
業種別の退職金制度の有無
業種によっても退職金制度の有無は異なります。同調査では「鉱業、採石業」砂利採取業」「電気・ガス・熱供給・水道業」では、約97%の企業で退職金制度があります。一方、飲食業や宿泊業、サービス業などでは、退職金制度がない割合が高い傾向にあります。
これは、業種によって従業員の定着率や労働環境が異なるためと推測できます。例えば、公務員や大手の製造業では、長期的な雇用を前提としているため、退職金制度を設けて従業員のモチベーションを高めることが重要です。一方、飲食業や宿泊業のなかには、従業員の入れ替わりが激しく、退職金制度を設けるメリットが少ないと考えている企業もあります。
退職金制度があっても支給されないケースとは?
退職金制度がある企業に勤めていても、必ずしも退職金が支給されるとは限りません。退職金制度には、支給条件が定められている場合があり、条件を満たさない場合は退職金が支給されないことがあります。
勤続年数の不足
最も一般的なのは、勤続年数の不足です。多くの企業では、退職金を支給するために一定以上の勤続年数を必要としています。勤続年数が短い場合、退職金が支給されないだけでなく、減額されることもあります。そのため、転職を検討する際は、退職金制度の支給条件を確認し、自身の勤続年数と照らし合わせて、退職金が支給されるかどうかを判断するようにしましょう。
自己都合退職と懲戒解雇
退職理由によっても、退職金の支給額が異なる場合があります。一般的に、自己都合退職の場合は、会社都合退職よりも退職金の支給額が低くなる傾向にあります。さらに、懲戒解雇の場合は、退職金が一切支給されないこともあります。懲戒解雇は、従業員が重大な不正行為や規律違反をおこなった場合に科せられる処分であり、退職金を支給するに値しないと判断されるためです。
退職金なしの会社で働くメリットとは?
退職金制度がない企業で働くことは、必ずしもデメリットばかりではありません。退職金がない代わりに、他のメリットがある場合もあります。
月々の給与が高い傾向にある
退職金制度がない企業では、退職金に相当する金額を月々の給与に上乗せしている場合があります。つまり、退職金がない代わりに、毎月の給与が高いということです。
これは、企業が優秀な人材を確保するために、給与水準を高めているためです。特に、ベンチャー企業やIT企業など、成長が著しい企業では、給与水準が高く、退職金制度がない場合が多い傾向にあります。
老後の資金計画が立てやすい
退職金がない場合、老後の資金計画を立てやすいというメリットもあります。退職金の金額は、勤続年数や退職時の給与によって変動するため、将来の金額を正確に予測することは困難です。
一方、退職金がない場合は、老後の資金は自分で準備する必要があります。そのため、早いうちから明確な目標を設定し、計画的に貯蓄や投資をおこなうことができます。
退職金受け取りの手続きが不要
退職金を受け取る際には、煩雑な手続きが必要となる場合があります。例えば、退職金の受け取り申請や税金の手続きなどをおこなう必要があります。退職金がない場合は、これらの手続きが一切不要です。退職後の手続きを簡素化したい方にとっては、メリットといえます。
退職金なしの会社で働くデメリットとは?
退職金制度がない企業で働くことには、デメリットも存在します。
老後の資金を自分で用意する必要がある
1つ目のデメリットは、老後の資金を自分で用意する必要があるということです。退職金は、老後の生活を支える重要な資金源であるため、退職金がない場合は、より計画的に貯蓄や投資をおこなう必要があります。
将来への不安を感じやすい
退職金がない場合、将来への不安を感じやすいというデメリットもあります。退職金は、万が一の事態に備えるための資金としても活用できます。例えば、病気やケガで働けなくなった場合や、予期せぬ出費が発生した場合など、退職金があれば安心して対応できます。退職金がない場合は、これらのリスクに備えて、より慎重な資金管理が必要となります。
退職金なしでも老後資金を確保するための対策
退職金がないからといって、老後を悲観する必要はありません。早いうちから対策を講じることで、十分な老後資金を確保することができます。
計画的な貯蓄を心がける
まずは、計画的な貯蓄を心がけましょう。毎月の収入から一定額を貯蓄に回すようにし、目標額を設定して、計画的に貯蓄を進めていきましょう。貯蓄の方法としては、銀行預金だけでなく、定期預金や積立預金などがあります。ライフスタイルや目標に合わせて最適な方法を選びましょう。
資産運用で効率的に増やす
貯蓄だけでなく、資産運用も積極的におこないましょう。資産運用は、貯蓄よりも効率的に資産を増やすことができる可能性があります。資産運用の方法としては、株式投資、投資信託、不動産投資など、さまざまな方法があります。自身の知識や経験、リスク許容度に合わせて、最適な方法を選びましょう。
ただし、資産運用にはリスクがともなうため、十分に注意が必要です。投資を行う前に情報収集をおこない、リスクを理解したうえで、慎重に判断しましょう。
iDeCoやNISAを活用する
国が推奨するiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA・新NISA(少額投資非課税制度)なども活用しましょう。これらの制度は、税制上の優遇措置があるため、効率的に資産を形成することができます。
iDeCoは、毎月一定額を積み立てて、将来の年金として受け取ることができる制度です。掛け金が全額所得控除となるため、節税効果も期待できます。NISAは、年間一定額までの投資で得た利益が非課税となる制度です。少額から投資を始めることができるため、初心者の方にもおすすめです。
副業やスキルアップで収入を増やす
貯蓄や投資だけでなく、収入を増やすことも重要です。副業を始めたり、スキルアップをして昇給を目指したりすることで、より多くの資金を老後のために準備することができます。
副業としては、アルバイト、クラウドソーシング、アフィリエイトなど、さまざまな方法があります。自身のスキルや経験を活かせる副業を選びましょう。スキルアップとしては、資格取得、セミナー受講、オンライン学習などがあります。自身のキャリアプランに合わせて、必要なスキルを身につけましょう。
退職金制度がある会社への転職も検討する
現在の会社に退職金制度がない場合は、退職金制度がある会社への転職も検討してみましょう。退職金制度は、老後の生活を支える重要な資金源であるため、転職を検討するうえで、重要な要素の1つとなります。転職活動をおこなう際は、企業の規模や業種だけでなく、退職金制度の有無や支給条件も確認するようにしましょう。
まとめ:退職金なしでも諦めない! 未来は自分で切り開こう
正社員なのに退職金がないことは、決して珍しいことではありません。しかし、退職金がないからといって、老後を悲観する必要はありません。計画的な貯蓄だけではなく副業やスキルアップ、転職などの対策を講じることで、老後資金を確保することができます。大切なのは、早いうちから老後について考え具体的な行動を起こすことです。この記事を参考に、将来に向けて今できることから始めてみましょう。