「正社員になったのにボーナスがない。これって普通なの?」そんな不安や疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。賞与は、社員のモチベーションを大きく左右する要素の1つ。それがないとなると、将来設計やキャリアプランに影響が出てくるのも当然です。
そこでこの記事では、正社員なのに賞与がないという状況について、その実態から、メリット・デメリットなどについて解説します。賞与なしの正社員という働き方を正しく理解し、後悔のないキャリア選択をするためにも、ぜひ最後までお読みください。
正社員で賞与なしは違法?法律の観点から解説
「正社員なのに賞与がないのは、法律的に問題ないの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。結論からいうと、必ずしも違法とは限りません。労働基準法では、賞与の支給義務は明確に定められていません。つまり、企業が就業規則や労働契約で「賞与を支給する」と定めていない限り、賞与を支給しなくても違法にはならないのです。
就業規則の確認が重要
賞与には注意すべき点があります。それは、就業規則です。就業規則に「賞与を支給する」という規定がある場合、企業は原則としてその規定に従って賞与を支給しなければなりません。
例えば、就業規則に「賞与は年2回、業績に応じて支給する」と記載されている場合、企業は業績が良好であれば賞与を支給する義務が生じます。もし、業績が良好であるにもかかわらず賞与が支給されない場合、労働者は企業に対して賞与の支払いを請求できる可能性があります。
また「入社時に賞与を支給すると口頭で約束された」というケースも考えられます。しかし、口頭での約束は証拠が残りにくいためトラブルになる可能性が高いです。できる限り、書面で確認を取っておくことが重要です。
賞与なしの正社員は珍しくない?
正社員で賞与がないという状況は、決して珍しいことではありません。企業の規模や業種、経営状況によって異なり、賞与制度自体がない企業も存在します。実際に、厚生労働省が発表している調査によると、令和6年の夏季賞与の支給状況は、調査産業計で73%(事業所規模が30人以上の場合は89.9%)です。つまり、事業所規模が30人以上であっても、約1割の労働者が賞与を受け取っていない可能性があるということです。このように賞与の有無は、企業によって左右されることがわかります。
参考:毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等|厚生労働省
なぜ賞与がない会社が存在するのか?
賞与がない会社が存在する理由はさまざまですが、主な要因としては以下の点が挙げられます。
- 経営状況の悪化:業績が悪化し、賞与を支給する余裕がない
- 設立間もない企業:資金繰りが安定しておらず、賞与を支給する余裕がない
- 年俸制の導入:年間の給与を12分割または14分割で支給するため、賞与という形での支給がない
- 成果主義の徹底:個人の成果に応じてインセンティブを支給するため、固定的な賞与制度がない
- 労働組合がない:労働条件の交渉力が弱く、賞与の要求が実現しにくい
これらの要因が複合的に絡み合って、賞与がない企業が存在しています。
賞与なしの正社員で働くメリットとは?
賞与がないということは、一見するとデメリットばかりのように思えますが、実はメリットも存在します。
メリット1:月々の給与が高い傾向がある
賞与がない企業では、月々の給与水準を高く設定している場合があります。これは、賞与がない分、従業員の生活を安定させるため、または優秀な人材を確保するための戦略としておこなわれることが多いです。
メリット2:年収が安定しやすい
賞与は、企業の業績によって支給額が変動することがあります。業績が悪化すれば、賞与が減額されたり、支給されなくなったりすることもあります。しかし、賞与がない企業では、月々の給与が安定しているため、年収が大きく変動するリスクを避けることができます。特に、住宅ローンや教育ローンなど、毎月固定の支出がある場合は、年収が安定している方が、生活設計を立てやすくなります。
メリット3:退職時期を調整しやすい
賞与は、支給される時期が決まっているため、退職を検討する際に「賞与をもらってから辞めよう」と考える人も少なくありません。しかし、賞与がない企業では、退職時期を自由に決めることができます。例えば、「今すぐに新しい仕事に挑戦したい」「家族の都合で引越しが決まった」といった場合でも、賞与の時期を気にする必要がないため、スムーズに退職することができます。
賞与なしの正社員で働くデメリットとは?
賞与がないことには、当然デメリットも存在します。考えられるデメリットを3つ紹介します。
デメリット1:まとまったお金が入りにくい
賞与は、年に数回、まとまった金額が支給されるため、旅行や大きな買い物など、特別な支出に充てやすいというメリットがあります。しかし、賞与がない企業では、そのようなまとまったお金が入ってこないため、計画的な貯蓄が必要です。
例えば、毎年夏と冬にそれぞれ50万円の賞与を受け取っていた人が、賞与なしの企業に転職した場合、年間100万円の貯蓄が難しくなる可能性があります。
デメリット2:モチベーションが低下する可能性がある
賞与は、日々の業務に対する評価として支給されるため、従業員のモチベーション向上につながるという側面があります。しかし、賞与がない企業では、そのようなモチベーションを維持するための仕組みが不足していると、モチベーションが低下する可能性があります。企業によっては、賞与の代わりにインセンティブ制度を導入したり、昇給の機会を増やしたりするなど、モチベーションを維持するための工夫を行っているところもあります。
デメリット3:経済的な余裕を感じにくい
賞与は、臨時収入として生活にゆとりをもたらす効果があります。しかし、賞与がない企業では、そのようなゆとりを感じにくいため、生活費を節約したり、副業で収入を増やしたりする必要が出る可能性があります。特に、家族を養っている場合は、賞与がないことで経済的な負担が大きくなる可能性があります。
賞与なしの企業で働く際の注意点
賞与がない企業で働くことを検討する際には、以下の点に注意する必要があります。
注意点1:基本給の水準を確認する
賞与がない分、基本給が十分に高いかどうかを確認することが重要です。同じ年収でも、基本給が高い方が、残業代や各種手当の計算の基礎となるため、有利になる場合があります。例えば、基本給が20万円の企業と30万円の企業では、同じ残業時間でも、残業代の金額に差が出ます。
注意点2:福利厚生の内容を確認する
賞与がない企業では、福利厚生が充実している場合があります。例えば、住宅手当、家族手当、通勤手当、社員食堂、保養施設など、福利厚生の内容を確認することで、賞与がないことによるデメリットを軽減できる可能性があります。特に、住宅手当や家族手当は、生活費の負担を大きく軽減してくれるため、重要なポイントです。
注意点3:昇給制度やキャリアパスを確認する
賞与がない企業では、昇給制度やキャリアパスが明確になっているかどうかを確認することが重要です。賞与の代わりに、昇給や昇進の機会が豊富に用意されている企業であれば、モチベーションを維持しながらキャリアアップを目指すことができます。
注意点4:企業の将来性や安定性を確認する
賞与がない企業では、企業の将来性や安定性を確認することが重要です。経営状況が不安定な企業では、将来的に給与が減額されたり、最悪の場合、倒産してしまう可能性もあります。企業のホームページや決算報告書などを確認するなどして、企業の情報を集めるようにしましょう。
賞与がない会社で収入を上げるには?
賞与がない会社で働く場合でも、収入を上げる方法はいくつかあります。
方法1:スキルアップで昇給を目指す
自分のスキルを磨き、会社に貢献することで昇給を目指すのが最も基本的な方法です。資格を取得したり、セミナーに参加したりするなどして、積極的にスキルアップを図りましょう。会社によっては、資格取得支援制度や研修制度を設けているところもあります。
方法2:副業で収入をプラスする
本業に支障がない範囲で、副業で収入を増やすのも有効な手段です。クラウドソーシングサイトなどを利用すれば、自分のスキルや経験を生かせる仕事を見つけることができます。ただし、副業が禁止されている企業もあるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。
方法3:資産運用で将来に備える
貯蓄だけでなく、資産運用も視野に入れてみましょう。株式投資や不動産投資など、さまざまな方法がありますが、リスクを理解したうえで、自分に合った運用方法を選ぶことが重要です。専門家のアドバイスを受けたり、セミナーに参加したりするなどして、知識を深めるようにしましょう。
方法4:転職を検討する
今の会社で収入を上げるのが難しいと感じたら、転職を検討するのも1つの選択肢です。賞与がある企業や、基本給の高い企業を探してみましょう。自分のスキルや経験に合った求人を見つけられれば、給与がアップする可能性があります。
まとめ:賞与なしの正社員という働き方を選択する前に
賞与なしの正社員という働き方は、一概に良いとも悪いともいえません。メリットとデメリットを理解したうえで、自分の価値観やライフプランに合った選択をすることが重要です。もし、賞与がないことに不安を感じる場合は、基本給の水準、福利厚生の内容、昇給制度、企業の将来性などを確認しておくと安心です。必要に応じて転職も視野に入れ、後悔のないキャリアを目指しましょう。