正社員として採用されたものの、試用期間中に「どうしても合わない」「もう辞めたい」と感じて、退職する選択肢が頭をよぎる人もいるかもしれません。しかし、ばっくれは安易な行動であり、さまざまなリスクをともないます。この記事では、試用期間中のばっくれがどのような結果を招くのか、後悔しないためにはどうすれば良いのかなどを解説します。試用期間中の退職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
試用期間中に「ばっくれたい」と考える背景とは
試用期間は、企業と従業員がお互いを見極めるための期間です。企業は従業員の能力や適性を見極め、従業員は企業の文化や業務内容が自分に合っているかを確認します。しかし、この期間中にミスマッチが生じ、ばっくれという選択肢を視野に入れる人がいます。その背景には、以下のような要因が考えられます。
- 理想と現実のギャップ:入社前に聞いていた話と実際の業務内容や労働環境が異なり、失望してしまう
- 人間関係の悩み:上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかず、孤立感やストレスを感じてしまう
- 業務への不適応:業務内容が自分のスキルや興味と合わず、自信を失ってしまう
- 精神的な負担:業務のプレッシャーや長時間労働により、精神的に疲弊してしまう
- ほかに魅力的な仕事が見つかった:より良い条件の企業から内定を得て、すぐにでも転職したいと考えてしまう
これらの要因が複合的に絡み合い、試用期間中の退職を検討する事態におよぶことがあります。ただしこの行為は、一時的な感情に流された安易な行動であり、後々後悔する可能性が高いことを理解しておく必要があります。
正社員が試用期間中にばっくれることで生じるリスク
正社員が試用期間中にばっくれる行為は、法的な責任や社会的な信用を損なうなど、さまざまなリスクをともないます。以下に、主なリスクを詳しく解説します。
給与の支払いが遅れる
労働基準法では、労働した分の給与は支払われることが保障されています。しかし、ばっくれの場合、給与の支払いが遅れる可能性があります。
懲戒解雇される可能性がある
ばっくれは、会社の就業規則に違反する行為とみなされ、懲戒解雇の対象となる可能性があります。懲戒解雇は、通常の解雇よりも重い処分です。また、懲戒解雇の記録は、転職活動において不利に働く可能性があります。企業は、採用選考において、応募者の過去の職歴を調査する場合があります。懲戒解雇の事実が判明した場合、採用を見送られる可能性が高まります。
社会的信用の失墜
ばっくれは、社会的な信用を失う行為とみなされます。特に知り合いを通じて転職した場合などは、ばっくれの事実が広まり、今後のキャリアに悪影響をおよぼす可能性があります。もし「ばっくれ癖がある」と判断された場合、他の企業からも敬遠される可能性があります。
精神的な負担
ばっくれた後は、会社からの連絡を無視したり、未払いの給与について交渉したりするなど、精神的な負担が大きくなります。また、罪悪感や後悔の念にさいなまれることもあります。ばっくれは、一時的な逃避に過ぎず、根本的な問題解決にはなりません。むしろ、問題を先送りするだけであり、将来的にさらに大きな問題を引き起こす可能性があります。
損害賠償請求のリスク
ばっくれによって会社に損害が発生した場合、損害賠償を請求される可能性があります。具体的には、ばっくれによって業務が滞り、会社の売上が減少した場合や、代替要員を確保するために追加の費用が発生した場合などが考えられます。ただし、損害賠償請求が認められるには、会社側が損害の発生とばっくれとの間に因果関係を証明する必要があります。実際には、損害額の算定が難しく請求に至るケースは稀ですが、可能性はゼロではありません。
ばっくれを選ぶ前に考えるべきこと
ばっくれは、最終手段として考えるべきであり、その前にできることはたくさんあります。ここでは、ばっくれを選ぶ前に考えるべき5つのステップを紹介します。
なぜ辞めたいのか原因を明確にする
まず、なぜ辞めたいのか、その原因を明確にすることが重要です。原因が特定できれば、解決策を見つけることができることがあります。
- 業務内容が合わない場合:異動を希望したり、スキルアップの機会を設けてもらったりする
- 人間関係の悩みがある場合:上司や同僚に相談したり、部署異動を希望したりする
- 労働条件への不満がある場合:残業時間を減らしたり、有給休暇を取得したりする
- キャリアプランとの不一致を感じる場合:自分のキャリアプランを再検討し、会社との方向性の違いを明確にする
原因を明確にすることで、具体的な改善策が見えてくることがあります。
会社に相談する
辞めたい理由が明確になったら、まずは会社に相談してみましょう。上司や人事担当者に相談することで、状況が改善される可能性があります。
例えば、業務内容が合わない場合は、異動を希望したり、スキルアップの機会を設けてもらったりすることを相談できます。人間関係の悩みがある場合は、上司に相談して、同僚とのコミュニケーションを円滑にするためのサポートを求めることができます。労働条件への不満がある場合は、残業時間を減らしたり、有給休暇を取得したりすることを交渉できます。
会社に相談することで、自分にとってより良い働き方ができる可能性が開けることがあります。
退職以外の選択肢を検討する
会社に相談しても状況が改善されない場合は、退職以外の選択肢を検討してみましょう。例えば、部署異動を希望することは、業務内容や人間関係を変えることで、新たな気持ちで働くことにつながる可能性があります。退職以外の選択肢を検討することで、会社を辞めずに問題を解決できる期待ができます。
退職する場合の準備をする
退職を決意した場合は、退職に向けて準備を始めましょう。まず、退職日を決定し、会社に退職の意思を伝えましょう。退職の意思は、原則として2週間前に伝える必要があります。
また、退職後の生活に向けて、必要な手続きをおこなう必要があります。例えば、雇用保険の手続きや、国民健康保険の手続きなどがあります。さらに、転職活動を始める場合は、履歴書や職務経歴書を作成し、求人情報を集めましょう。退職に向けて準備をすることで、スムーズに退職することができます。
退職代行サービスの利用を検討する
会社に退職の意思を伝えるのがどうしても難しい場合や、会社との交渉がうまくいかない場合は、退職代行サービスの利用も検討してみましょう。退職代行サービスは、弁護士や専門業者が、あなたの代わりに会社に退職の意思を伝え、退職手続きを代行してくれるサービスです。退職代行サービスを利用することで、会社との直接的なやり取りを避けることができ、精神的な負担を軽減することができます。ただし、退職代行サービスを利用しても、会社とのトラブルが完全に解消されるとは限らないことを覚えておきましょう。
できるだけ円満に退職するために知っておくべきポイント
試用期間中の退職は、法律で認められた権利ですが、円満に退職するためには、法律や手続きを理解しておくことが重要です。
退職の意思表示
民法では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の意思を2週間前に告知する義務があると定められています。これは、試用期間中であっても同様です。口頭で伝えることも可能ですが、後々のトラブルを避けるため、退職届を提出することをおすすめします。退職届には、退職日、退職理由などを記載します。
有給休暇の消化
試用期間中であっても、有給休暇を取得する権利があります。退職日までに有給休暇を消化したい場合は、会社に申請しましょう。ただし、会社の業務に支障が出る場合は、有給休暇の取得を拒否されることもあります。また、試用期間が短い場合は、有給休暇の取得条件を満たしていないこともあります。
転職活動に必要な離職票の発行
退職後、会社から離職票が発行されます。離職票は、雇用保険の手続きや転職活動に必要な書類です。離職票は、退職後10日以内に会社から送られてくるのが一般的です。もし、離職票が送られてこない場合は、会社に連絡して発行を依頼しましょう。
雇用保険の手続き
雇用保険に加入している場合は、退職後、ハローワークで雇用保険の手続きをおこなうことで、失業給付を受けることができます。失業給付を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。例えば、離職日以前2年間に、被保険者期間が12ヵ月以上あることなどです。
ばっくれてしまった後の対処法
もし、衝動的にばっくれてしまった場合は、冷静に対処することが重要です。
会社へ謝罪と状況説明をする
まずは、会社に連絡を入れ、ばっくれてしまったことを謝罪しましょう。そして、ばっくれてしまった理由や現在の状況を説明します。会社からの連絡を無視することは、事態を悪化させる可能性があります。誠意をもって対応することで、会社との関係修復につながるケースがあります。
給与の受け取り
ばっくれた場合でも、働いた分の給与は支払われる権利があります。会社に連絡し、未払い分の給与を請求しましょう。もし、会社が不当に支払いを拒否したり、不当な減額をしたりする場合は、労働基準監督署に相談することも検討しましょう。
今後のキャリアへのための反省と改善
ばっくれは、今後のキャリアに悪影響をおよぼす可能性があります。ばっくれたことを反省し、今後は二度と繰り返さないように心がけましょう。転職活動では、ばっくれたことを正直に伝える必要はありません。しかし、面接で退職理由を聞かれた場合は、正直に答えるようにしましょう。
まとめ:試用期間中のばっくれで後悔しないようにしよう
試用期間中のばっくれは、さまざまなリスクをともなう安易な行動であり、おすすめできません。ばっくれる前に、辞めたい理由を明確にし、会社に相談したり、退職以外の選択肢を検討したりするなど、できる限りの手段を講じましょう。もし、どうしても会社を辞めたい場合は、2週間前に退職の意思を伝え、円満に退職するように心がけましょう。試用期間は、あなたと会社がお互いを見極めるための大切な期間です。焦らず、じっくりと自分に合った働き方を見つけてください。