近年、働き方の多様化が進み、正社員として働きながら別の仕事もおこなう「ダブルワーク」に関心を持つ人が増えています。この記事では、正社員のダブルワークに関する疑問を解消するために、法律や会社規則、ダブルワークのメリット・デメリット、注意点などを解説します。ダブルワークを検討している方はぜひ参考にしてください。
ダブルワークとは?副業との違い
ダブルワークとは、2つ以上の仕事を掛け持ちして収入を得ることを指します。似た言葉に「副業」がありますが、一般的に副業は本業以外の仕事で収入を得ることを指し、ダブルワークは複数の仕事が対等な関係にあるニュアンスを含みます。
たとえば、正社員として働きながら、週末にアルバイトをする場合は副業、正社員として働きながら、別の会社でも正社員として働く場合はダブルワークと呼ばれることが多いです。ただし、明確な区別はなく、企業や個人によって解釈が異なる場合があります。この記事では、正社員が本業以外に別の仕事で収入を得ることを、副業・ダブルワークとして扱います。
正社員のダブルワークは法律で禁止されている?
結論からいうと、法律で正社員のダブルワークは禁止されていません。公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって、原則として副業が禁止されていますが、一般企業に勤める正社員であれば、法律上はダブルワークをしても問題ありません。しかし、会社によっては就業規則で副業を禁止している場合があるので、注意が必要です。
会社が正社員のダブルワークを禁止する理由
法律で禁止されていなくても、会社が就業規則でダブルワークを禁止している場合があります。その理由としては、主に以下の点が挙げられます。
本業への支障
ダブルワークが禁止する1つ目の理由は、ダブルワークによって労働時間が増加し疲労が蓄積することで、本業に集中できなくなる可能性があるためです。注意力が散漫になったり体調を崩したりすると、業務効率や品質の低下につながる恐れがあります。
情報漏洩のリスク
ダブルワークによって、会社の機密情報や顧客情報がダブルワーク先を通じて漏洩するリスクもあります。特に、同業他社でダブルワークをする場合は、情報漏洩のリスクが高いと懸念されます。
過重労働
従業員の労働時間を適切に管理し、健康に配慮する義務を会社は負っています。ダブルワークによって従業員の労働時間が把握しきれず、過重労働による健康被害が発生した場合、会社が責任を問われる可能性があります。
これらの理由から、就業規則でダブルワークを制限または禁止している会社があります。ダブルワークを検討する際には、必ず自社の就業規則を確認し、禁止されていないかを確認しましょう。
正社員がダブルワークをするメリット
会社がダブルワークを禁止する理由がある一方で、正社員がダブルワークをすることには、以下のようなメリットも存在します。
収入アップ
ダブルワークによって収入が増加し、生活水準の向上や貯蓄の増加につながります。住宅ローンや教育ローンなどの返済に充てることもできます。本業の年収が400万円で、ダブルワークで年間80万円の収入を得た場合、年収は480万円に増加します。
スキルアップ
本業とは異なる分野の仕事に挑戦することで、新たなスキルや知識を習得できます。これらのスキルや知識は、本業にも活かすことが可能です。本業が営業職の場合、ダブルワークでプログラミングを学ぶことで、営業資料の作成や顧客への技術的な説明に役立てることができます。
キャリアアップ
ダブルワークを通じて自分の適性や興味関心を発見し、キャリアの幅を広げられれば、将来的に独立・起業を目指すための準備にもなります。本業が事務職の場合、ダブルワークでWebデザインの仕事に挑戦し、その才能を開花させて、Webデザイナーとして独立する道を選ぶことができます。
人脈拡大
本業とは異なるコミュニティに参加することで、新たな人脈を築くことも可能です。これらの人脈は、ビジネスチャンスや情報源として役立つことがあります。本業がエンジニアの場合、ダブルワークでNPOの活動に参加し、さまざまな分野の専門家と交流することで、社会的な課題に対する理解を深め、新たなビジネスアイデアを生み出すことができます。
自己肯定感の向上
新しい仕事に挑戦し成果を出すことで、自己肯定感が高まります。また、収入が増加することで経済的な自立を実感し、自信を持つことができます。
これらのメリットを最大限に活かすためには、ダブルワークの目的を明確にし計画的に取り組む必要があります。
正社員がダブルワークをするデメリット
メリットがある一方で、正社員がダブルワークをすることには、以下のようなデメリットも存在します。
過労
労働時間が増加し、睡眠不足や疲労の蓄積につながる可能性があります。体調を崩したり、精神的に不安定になったりするリスクがあります。ダブルワークの労働時間を適切に管理し、十分な睡眠時間を確保するように心がけましょう。
本業への支障
ダブルワークに時間を費やすことで、本業に集中できなくなる可能性があります。業務効率や品質の低下、遅刻や欠勤の増加につながる恐れがあるため、本業とダブルワークの優先順位を明確にし時間管理を徹底しましょう。
プライベート時間の減少
ダブルワークに時間を費やすことで、家族や友人との時間、趣味や休息のための時間が減少し、生活の質が低下する可能性があります。ダブルワークの時間を固定化し、プライベートの時間を確保するように心がけましょう。
税金・社会保険
ダブルワークによって収入が増加した場合、確定申告が必要になる場合があります。また、社会保険の加入条件を満たす場合は、加入手続きが必要です。税金や社会保険に関する知識を身につけ、適切な手続きをおこないましょう。不安があれば、税理士や社会保険労務士に相談することも大切です。
会社とのトラブル
会社に内緒でダブルワークをしていた場合、就業規則違反として懲戒処分を受ける可能性があります。ダブルワークを始める前に、必ず就業規則を確認し、会社に相談するようにしましょう。
これらのデメリットを理解したうえで、ダブルワークをおこなうかどうかを慎重に判断する必要があります。
ダブルワークが会社にバレる理由とは
会社がダブルワークを禁止している場合、バレないようにしたいと考える人もいるかもしれません。しかし、以下の理由からダブルワークが会社にバレる可能性があります。
住民税
住民税は、前年の所得に応じて決定されるため、ダブルワークによって所得が増加した場合、住民税の額も増加します。会社は従業員の住民税を給与から天引きしていますが、住民税の額が大幅に増加すると、会社にダブルワークをしていることが疑われる可能性があります。
確定申告の際に、住民税を自分で納付する「普通徴収」を選択することで、会社への通知を避けることができます。ただし、手続きが煩雑になる場合や、自治体によっては普通徴収が認められない場合があるので、注意が必要です。
同僚からの密告
会社内でダブルワークをしていることを話してしまった場合や、ダブルワーク先で会社の同僚に見られた場合、会社に情報が漏れる可能性があります。会社関係者には、ダブルワークをしていることを絶対に話さないようにしましょう。ダブルワーク先でも、会社の同僚に会わないように注意しましょう。
SNS
SNSでダブルワークに関する情報を発信した場合、会社関係者に見つかる可能性があります。SNSのプライバシー設定を見直し、会社関係者に見られないように設定しましょう。ダブルワークに関する情報を発信する際は、個人が特定されないように注意しましょう。
上記のほかにも、雇用保険の加入などからダブルワークをしていることが会社に伝わる可能性があります。会社にバレてから後悔しないためにも、就業規則で禁止されているのであればルールを守るようにしましょう。
ダブルワークを検討する前に確認すべきこと
ダブルワークを始める前に、まず会社の就業規則を確認し、ダブルワークが禁止されていないかを確認しましょう。就業規則に違反した場合、懲戒処分を受ける可能性があります。そのうえで、ダブルワークが本業に支障をきたさないか、慎重に検討しましょう。労働時間や体力的な負担、精神的なストレスなどを考慮し、無理のない範囲でダブルワークをおこなうことが大切です。
加えて、以下の点を確認しておきましょう。
- なぜダブルワークをしたいのか、目的を明確にする
- 自分のスキルや経験、興味関心などを考慮し、どのようなダブルワークをするか、慎重に検討する
- 収入が増加した場合、税金や社会保険の手続きが必要になると知っておく
また、ダブルワークによって、家族との時間が減ったり、家事に協力する時間が減ったりする可能性があります。事前に家族に相談し、理解を得ておくことも大切です。これらの点を確認し慎重に検討したうえで、ダブルワークをおこなうかどうかを判断しましょう。
ダブルワークをする際の注意点まとめ
正社員がダブルワークをする際には、以下のようなさまざまな注意点があります。
- 会社の就業規則を必ず確認し、ダブルワークが禁止されていないかを確認する
- ダブルワークが本業に支障をきたさないように、時間管理を徹底する
- 過労にならないように、十分な睡眠時間を確保し、体調管理に気をつける
- 会社の機密情報を漏洩しないように、情報管理を徹底する
- ダブルワークによって収入が増加した場合、確定申告を忘れずにおこなう
これらの注意点を守り、計画的にダブルワークをおこなうことで、収入アップやスキルアップ、キャリアアップにつなげることができます。しかし、無理なダブルワークは、健康を害したり、本業に支障をきたしたりする可能性があります。自分のライフスタイルや体力、スキルなどを考慮し、慎重に判断するようにしましょう。もし、ダブルワークが難しいと感じたら、転職やキャリアチェンジなど、他の選択肢も検討してみることをおすすめします。