派遣社員も有給休暇を取得できる?取得条件や日数などのルールを解説

「派遣社員は、有給休暇を取得できるの?」と疑問を感じることがあると思います。結論をお伝えすると、派遣社員も有給休暇を取得することが可能です。

本記事では、派遣社員の有給休暇について基礎知識をまとめました。ルールを知らないことで有給を取得できる機会を失わないためにも、ぜひ最後までお読みください。

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派遣社員も有給休暇を取得できる

有給休暇(年次有給休暇)とは、一定の期間、継続的に勤務した労働者に対して雇用主が与える「給与が発生する休暇のこと」を指します。以下のように、労働基準法第三十九条で規定されています。

(年次有給休暇)
第三十九条
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

引用:労働基準法|e-Govポータル

取得対象となる労働者は、雇用形態などといった区分がなく、派遣社員をふくめたすべての労働者です。

業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。

引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省

ちなみに、東京都産業労働局がおこなった調査によると、派遣社員のうち93.1%が「有給休暇がある」と答えています。

出典:令和4年度 派遣労働に関する実態調査|東京都産業労働局

以上から、派遣社員であっても、私用など何かしらの理由で仕事を休んだ場合には、有給休暇を使って使用者(派遣会社)から賃金を受け取れるといえます。

ただ、派遣社員が有給休暇を取得する際には、知っておくべきルールがいくつあるため注意が必要です。そこで次から、有給休暇の基礎知識を解説していきます。

有給休暇とは

ここで、派遣社員が知っておくべき有給休暇に関する基本的なルールとして、以下の4つをお伝えします。

  1. 有給休暇の取得条件
  2. 有給休暇を取得できる日数
  3. 取得日の決め方
  4. 有給休暇の時効

それぞれについて、見ていきましょう。

有給休暇の取得条件

労働基準法では、労働者が有給休暇を取得できる条件として、以下の2つが定められています。

出典:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省

  1. 雇い入れの日から6ヵ月以上、継続して勤務している
  2. 全労働日の8割以上を出勤している

有給休暇が付与されるには、雇用日から起算して、継続的に勤務している期間が「6ヵ月以上」あることが前提です。派遣社員の場合は「派遣元(派遣会社)」との雇用契約が6ヵ月以上続いたうえで、継続的に勤務した実態が全労働日の8割以上であれば、条件を満たせます。

次に満たすべき条件は、「全労働日の8割以上勤務していること」です。何らかの事情で欠勤が増え、全労働日の8割以上勤務していないと、6ヵ月以上働いても有給は付与されません。そのため、自身が継続して勤務している期間を把握しておくことが大切です。

例えば、派遣社員として働き始めて4ヵ月目に派遣先が変わったとしても、同じ派遣元に所属していれば、6ヵ月以上継続して勤務した時点で有給休暇が付与されます。一方で、契約満了後に派遣会社に登録したままでも、新たな契約を結ばず勤務実態に空白があるとみなされれば、付与される要件を満たせないことがあるので注意しましょう。

有給休暇を取得できる日数

有給休暇を取得できる日数は、「継続勤務年数」と「所定労働日数」によって変化します。一般的なフルタイム(1日8時間労働で週に40時間勤務)で働く場合は、下表のように有給休暇を取得することが可能です。

継続
勤務
年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与
日数
10日11日12日14日16日18日20日

このように継続勤務年数が長くなると、取得できる有給休暇の日数が増加していきます。

一方で、フルタイムではなく、「週の出勤日数が4日以下」で「1週間の労働時間が30時間未満」の場合に付与される有給の日数は、下記のとおりです。

週所定労働日数4日で、1年間の所定労働日数が169~216日の場合

継続
勤務
年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与
日数
7日8日9日10日12日13日15日

週所定労働日数3日で、1年間の所定労働日数が121~168日の場合

継続
勤務
年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与
日数
5日6日6日8日9日10日11日

週所定労働日数2日で、1年間の所定労働日数が73~120日の場合

継続
勤務
年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与
日数
3日4日4日5日6日6日7日

週所定労働日数1日で、1年間の所定労働日数が48~72日の場合

継続
勤務
年数
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
付与
日数
1日2日2日2日3日3日3日

会社の規定で労働日数が決まっているフルタイム労働者に対し、派遣社員は契約ごとに労働日数が異なります。そのため、自身の正確な勤務実態を知りたい場合は派遣会社へ確認しておくことをおすすめします。

なお、ここでお伝えしたのは、法的に定められた有給休暇の付与日数です。企業によっては「法定外福利厚生」として、これ以上の日数を付与していることもあります。

派遣社員の福利厚生については、下記の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。

取得日の決め方

原則として、有給休暇を取得する日は労働者が自由に決められます。ただ、労働基準法には下記のような規定があります。

第三十九条
⑤ 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

引用:労働基準法|e-Govポータル

この規定は、労働者の希望に合わせて有給を付与するとされている一方で、事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者が取得日の変更を交渉できるという内容です。使用者が労働者の有給取得を拒否できるのではなく、「別の日を提案できる」ということなので、実際に取得する際は、派遣社員と派遣会社で話し合いをおこなうことが大切です。

【補足】取得促進のため使用者には「時季指定義務」がある

前述のとおり、有給休暇は、原則として労働者が請求する時季に与えなければなりません。ただし過去には、職場への配慮から、労働者が取得をためらう状況がありました。

そこで取得を促進するために、使用者(雇用主)が労働者に対して時季指定をすることが義務付けられています。

出典:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省

第三十九条
⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。

引用:労働基準法|e-Govポータル

このように、10日以上の有給休暇が付与される労働者に対しては、1年以内に5日間は使用者が取得する時季を指定する必要があります。ただし、すでに4日以下取得しているのであれば、その日数を差し引いて適用されます。

この制度は、あくまで使用者が時季を「提案」するものであり、一方的に日程を指定して良いということではありません。企業が有給取得の時季を指定する際であっても、労働者の意見が尊重されるので安心して申請してください。

有給休暇の時効

有給休暇には時効が決められており、取得してから2年で消滅します。

(時効)
第百十五条
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

引用:労働基準法|e-Govポータル

せっかく付与された有給休暇を無駄にしないためにも、残りの有給の日数は自身で正確に把握しておきましょう。

なお、派遣社員の場合は、派遣会社との雇用契約が終了したタイミングで有給が消滅します。派遣会社によっては、一定の期間勤務していないと登録がいったん解除されることがあるため、登録している派遣会社の規定を確認しておくことをおすすめします。

派遣社員の有給休暇に関する4つのルール

ここでは、派遣社員の有給休暇に関するルールとして以下の4つを紹介します。

  1. 取得の申請は派遣元におこなう
  2. 有給休暇中の賃金は派遣元が支払う
  3. 派遣先が変わっても有給は引き継がれる
  4. 直接雇用に切り替わるとリセットされるのが原則

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

ルール1. 取得の申請は派遣元におこなう

有給休暇の申請は、「派遣元」へおこなうのが基本です。派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣先ではなく派遣元なので、派遣元をとおして手続きを進めます。

ただし、有給を取得するタイミングについては、実際に働いている派遣先との調整が必要です。そのため、派遣元だけでなく派遣先にも申請が必要なケースがあるので、事前にルールを確認しておきましょう。

ルール2. 有給休暇中の賃金は派遣元が支払う

労働基準法では、有給休暇を取得中の賃金について下記のように規定されています。

第三十九条
⑨ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。

ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

引用:労働基準法|e-Govポータル

この条文によると、有給休暇中の賃金は以下の3つのいずれかで算出して支払われます。

  1. 通常の勤務日と同じ賃金
  2. 直近3ヵ月の平均賃金
  3. 標準報酬日額

これについても、勤めている派遣会社の「就業規則」などに明記されているため、あらためて確認しておくことをおすすめします。

ルール3. 派遣先が変わっても有給は引き継がれる

派遣先が変わっても、付与された有給休暇は引き継がれます。なぜなら、有給休暇は派遣先ではなく派遣元から付与されるためです。有給休暇を取得したあとに派遣会社が変わらなければ、新しい派遣先での勤務が開始した月から有給を取得することができます。

ルール4. 直接雇用に切り替わるとリセットされるのが原則

派遣会社に登録して派遣社員として働いていた人が、派遣先と雇用契約を直接結んだ場合、派遣社員のときに取得した有給休暇は消滅します。

直接雇用に切り替わると、雇用契約を結ぶ相手が派遣元から「派遣先」に移ります。そのため、有給を付与する使用者が変わるため、引き継がれることはありません。

ただし、法定外福利厚生として、法律で定められた日数以上に有給休暇を付与している企業があります。その場合は融通を利かせてもらえるケースがあるため、どのようなルールで付与されるか事前に確認しておくと安心です。

派遣社員が有給休暇を取得する方法

派遣社員が有給休暇を取得するには、自身が有給休暇を付与されているかどうかを確認することからはじめます。派遣社員として6ヵ月以上働いたら、雇用契約を結んでいる派遣会社に確認してみましょう。付与された時点で連絡を受けるケースもありますが、問い合わせが必要なケースもあるので、派遣会社の担当者に確認してみてください。

次に、有給休暇を取得する日を決めます。原則として、取得日は労働者が自由に決められますが、繁忙期や重要なイベントがある日などに休むと、通常の業務に支障が出る懸念があります。

このため、有給を取得する日は「休みたい日の1ヵ月ほど前」を目安に、派遣会社へ相談しましょう。早めに相談を受けていれば、派遣会社が派遣先と調整できるため、有給を取りやすくなる可能性があります。

有給休暇を取る日が決まったら派遣元に申請書を提出し、受諾されれば指定した日に有給を取得できます。ただし、申請の方法は企業によって異なるので、「いつまでに」「だれに」「どのような手続きが必要か」を、必ず事前に確認しておいてください。

派遣社員の有給休暇に関するQ&A

ここでは、有給休暇について、派遣社員の方がよく感じる疑問を4つ紹介します。

Q1. 有給は時間単位でも取得できる?

有給は「半日」や「時間」といった単位でも取得できるケースがあります。これは、企業が定める有給休暇の制度によって異なるので、派遣会社に確認しておきましょう。

Q2. 申請書の理由欄には何と書けばOK?

「私用のため」など、簡潔に書くだけで問題ありません。基本的には、会社に詳細な理由を伝える必要がないとされています。ただし理由を伝えることで、派遣先での調整がスムーズになるケースがあるため、可能な範囲でかわまないので口頭で説明しておくとベターです。

Q3. 派遣会社から「有給はない」と言われることはある?

有給休暇は、すべての労働者に与えられている権利です。そのため、使用者が拒否することはできません。

「有給がない」と告げられたのであれば、労働基準法で定められた要件をまだ満たしておらず、付与されていない可能性があるため、まずは派遣会社に状況を確認しましょう。

法的な要件を満たしているのに有給はないと告げられる場合は、派遣会社が法律に反している恐れがあります。会社側の担当者と話し合っても解決しない場合には、地域の労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどに相談してみましょう。

▼相談先の例

Q4. 有給を取得したら給与に影響が出る?

有給を取得しても、給与には影響しません。有給と給料の関係については、労働基準法に下記のような規定があります。

第百三十六条
使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

引用:労働基準法|e-Govポータル

これは、有給休暇を取得した労働者に対して、不利益な取り扱いをすることを禁止したものです。有給を取ったことで減給などの不利益が生じた場合、まずは派遣会社に確認をしてください。

納得できる理由がなく改善されないときは、地域の労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどに相談することをおすすめします。

まとめ:有給のルールを把握して派遣社員も休暇を取得しよう

本記事でお伝えしたとおり、派遣社員も有給休暇を取得することが可能です。「雇い入れの日から6ヵ月以上、継続して勤務していること」「全労働日の8割以上を出勤していること」の両者を満たしていれば、雇用形態にかかわらず付与されます。

有給は、法律で定められた労働者の権利なので、この記事の内容を参考にしながら積極的に活用してみてください。

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