「正社員からパートに切り替えたいけれど、今まで積み立てた退職金はどうなるの?」 「パート勤務でも退職金はもらえるの?」
働き方を変える際、このようなお金の不安を感じる方は少なくありません。この記事では、雇用形態が変わる際の退職金の仕組みや、自分がもらえるかを確認する方法、さらにパートの退職金相場などを解説します。
知らずに損をしないためにも、ぜひ最後までチェックしてください。
正社員からパートへ変更時の退職金はどうなる?
正社員として長年勤めた会社で、家庭の事情やライフスタイルの変化によりパートタイム勤務(短時間勤務)へ変更する場合、気になるのが「これまでの退職金」の行方です。
この章では、雇用形態が変わるタイミングで退職金がどう処理されるのか、代表的なパターンと法的観点について解説します。
考えられるパターンは2つ「精算する」か「通算する」か
結論からいうと、正社員からパートへ雇用形態が変わる際の退職金の扱いは、主に以下の2パターンのどちらかになります。
- 正社員退職として精算される:正社員としての期間を一度区切り、その時点での退職金を受け取る
- 勤続年数を通算して将来支給される:支払いは保留され、将来完全に退職する時にまとめて受け取る
なぜこのように対応が分かれるかというと、法律上、雇用形態変更時の退職金取り扱いに関する統一された決まりがないからです。つまり、各企業に判断を委ねられています。
どちらのパターンになるかで、手元に現金が入る時期や、税金の計算(退職所得控除の期間計算)が変わります。自己判断せず、必ず会社の規定を確認することが重要です。
正社員期間の退職金がいったん支払われるケース
このケースは、正社員としての雇用契約を形式上「退職」として終了させ、新たにパートタイマーとして雇用契約を結び直す場合に見られます。
「正社員の退職」という事実にもとづき、それまでの勤続期間に対して退職金がいくらであるかが確定するため、パートへの切り替え時期に合わせて退職金が支払われます。
このパターンの特徴は以下のとおりです。
▼メリット
- まとまった現金が早期に手に入るため、生活資金や住宅ローンの返済などに充てられる
- これまでの正社員期間に対する権利が確定するため、未払いの不安が解消される
▼デメリット・注意点
- 勤続年数がリセットされる
- 税務上は「退職所得」として扱われ、正社員としての勤続年数に応じた控除が適用される
勤続年数が通算されて将来まとめて支払われるケース
こちらは、雇用形態が変わっても「同一企業での継続勤務」とみなし、最終的に会社を辞めるタイミングでまとめて支払われるパターンです。
計算方法としては、「正社員期間の単価」と「パート期間の単価」を別々に計算して合算する方式が採用されるのが一般的です。
▼メリット
- 勤続年数が長くなる
- 退職後の資金として温存できる
▼注意点
- パート転換時には支給されないため、直近の資金需要には対応できない
- 会社の経営状況が悪化した場合、将来受け取れる額に影響が出るリスクもゼロではない
雇用形態の変更時に退職金が出ない・減額されるのは違法?
「正社員からパートになるなら、これまでの退職金はゼロにします」 もし会社からこのように言われた場合、それは違法となる可能性があります。
就業規則にあらかじめ明確な規定がある場合は適法となることもありますが、労働契約法では、労働者に不利益な労働条件の変更をおこなう場合、原則として労働者の合意が必要とされています。合理的な理由なく、一方的に不支給や大幅な減額を決定することは認められにくいのが現状です。
もし雇用形態の変更にともない、同意書への署名を求められた場合は、内容をよく読み、退職金の扱いについて納得してからサインするようにしましょう。
最初からパート勤務でも退職金はもらえる?
「そもそもパートにも退職金制度はあるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。 ここでは、パートタイム労働者の退職金事情について解説します。
【結論】就業規則に規定があればもらえる
パートタイム労働者であっても、会社の就業規則(退職金規程)に支給条件が明記されていれば、退職金を受け取る権利があります。
退職金制度の有無や対象者をどうするかは、企業が独自に定めることができる事項です。そのため、確認すべきポイントは以下の2点です。
- 就業規則に「パートタイマーには支給しない」と明記されているか?
→この場合は、原則もらえない - 「全従業員を対象とする」などの記述があり、パートを除外する規定がないか?
→この場合は、請求できる可能性がある
法律上の義務はないが支給する企業もある
残念ながら、企業に退職金の支払いを義務付ける法律はありません。労働基準法などは賃金の支払いを義務付けていますが、退職金制度を設けるかどうかは企業の自由です。
しかし近年では、人材確保や定着率向上のために、パート社員にも退職金やそれに準ずる一時金を出す企業もあります。
「同一労働同一賃金」で正社員と同等の支給となる条件
2020年から施行された「パート有期労働法(同一労働同一賃金)」により、正社員と業務内容や責任の重さが同一であれば、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。これには退職金も含まれます。
ただし、実際に退職金不支給が「不合理」と認められるハードルは高めではあります。正社員とパートで「長期雇用の慣行」や「人事異動の有無」に違いがある場合、退職金の差も合理的とされることがあるからです。
とはいえ、正社員とまったく同じ働き方をしている場合は交渉の余地がありますし、今後の法解釈の変化によって状況が変わる可能性もあります。
自分がもらえるか確認する3つのステップ
では、実際に自分が退職金をもらえる対象なのか、どうやって確認すればよいのでしょうか。角を立てずに確認するための3つのステップをご紹介します。
手順1:雇用契約書・労働条件通知書を見る
まずは手元の書類を確認しましょう。入社時や契約更新時に会社から渡される「雇用契約書」または「労働条件通知書」を見てください。労働基準法により、会社は労働条件通知書に「退職金に関する事項(有無)」を明示する義務があります。
- 「退職金:有」となっていれば、支給対象
- 「退職金:無」となっていれば、原則支給はない
これが、今すぐできる一次確認方法です。
手順2:就業規則(賃金規程・退職金規程)を確認する
契約書の記載が大まかだったり、書類が見当たらない場合は、職場の「就業規則」を確認しましょう。特に退職金については、「退職金規程」としてまとめられていることがあります。
従業員には就業規則をいつでも閲覧できる権利があります。以下の点に着目して読み込みましょう。
- 適用範囲:「正社員にのみ適用する」「パートタイマーには適用しない」といった除外規定がないか?
- 支給要件:「勤続◯年以上で支給」といった条件があるか?
手順3:人事担当者や上司に直接問い合わせる
書類だけでは判断がつかない、あるいは中退共への加入状況などが見えない場合は、総務・人事担当者や上司に直接確認するのが確実です。
「お金のことを聞くと印象が悪くなるのでは?」と心配な場合は、「将来の生活設計を立てたいので、退職金制度の有無や仕組みについて教えていただけますか?」のように前向きな理由を添えると角が立ちにくいです。聞いた内容は必ずメモに残し、言った言わないのトラブルを防ぐようにしましょう。
パートの退職金の相場とは
もしパートで退職金がもらえる場合、いくらくらいになるのでしょうか。過度な期待は禁物ですが、一般的な相場と計算の目安を知っておきましょう。
一般的な相場は「寸志」程度から数万円
正直なところ、パートの退職金相場は正社員に比べてかなり低く設定されている傾向があります。多くの場合、数万円〜10万円程度、あるいは「寸志(お礼程度)」です。
これは、退職金の計算ベースとなる基本給が低いことや、パート向けの支給係数(給付率)が低く抑えられているためです。正社員のようなまとまった退職金は期待できないのが現実ですので、あくまで「慰労金」のように捉えておくのが無難です。
退職金にかかる税金と退職所得控除の仕組み
結論からいうと、パートの退職金程度の金額であれば、税金はかからない(非課税になる)ケースがほとんどです。退職金は「退職所得」として扱われ、勤続年数に応じた控除枠(退職所得控除)があるためです。
- 勤続20年以下の場合の計算式:40万円 × 勤続年数
ただし、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、一律20.42%が源泉徴収されてしまうため、忘れずに提出してください。
退職金が出ない・不当だと感じた場合の対処法
ここでは、「規定にはあるのにもらえなかった」「正社員と同じ仕事なのに自分だけゼロなのは納得がいかない」。そんな場合の対処法をまとめました。
就業規則に記載があるのに支払われない場合
就業規則や賃金規程に明確な支給条件が記載されているにもかかわらず、会社が支払わない場合は「債務不履行(契約違反)」にあたります。
会社には支払いの法的義務が生じているため、以下の手順で請求が可能です。
- 就業規則のコピーなど、根拠となる証拠を揃える。
- 会社に対して書面(内容証明郵便など)で請求する。
「経営が苦しいから」といった理由は、労働者の同意なしに支払いを拒む正当な理由にはなりません。
正社員とまったく同じ仕事なのに不支給の場合
「同一労働同一賃金」の観点から、会社に対して説明を求めることができます。パート有期労働法では、待遇差の内容や理由について、事業主に説明義務を課しています。
職務内容、責任の程度、転勤の有無などが正社員と同一であることを整理し、会社側へ「なぜ退職金に差があるのか(不支給なのか)」を問い質してみましょう。すぐに違法と断定するのは難しいですが、交渉の材料や待遇改善のきっかけにはなります。
正社員からパートになるときは長期的な視点で資金計画を立てよう
あらためて、この記事のポイントをまとめます。
- 正社員からパートへの変更時、退職金は「精算」か「通算」の2パターン
- パートでも就業規則に規定があれば退職金はもらえるが、金額は少なめ
ここまで解説してきた通り、パート勤務における退職金は「出ない」か、出ても「少額」であるケースが一般的です。制度設計上、どうしても正社員優遇の側面が強いため、パート収入や退職金だけをあてにした資金計画はリスクが高いと言わざるを得ない面があります。
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