企業が正社員を解雇するには、厳しい条件を満たす必要があります。企業は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる場合にのみ、正社員を解雇できます。
ただし、「絶対にクビにならない」わけではありません。会社が法的に認められる理由と手順を踏めば、正社員であっても解雇される可能性はあります。そこで、この記事では、正社員が解雇される条件、解雇が認められる理由、そして万が一解雇されてしまった場合の対処法について解説していきます。
解雇が法律で禁止されているケースとは
労働者を保護する日本の法律では、特定の状況下における解雇を明確に禁止しています。具体的なルールを以下に紹介します。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働契約法|e-Govポータル
<労働基準法>
業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇
産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇
労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
<労働組合法>
労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇
<男女雇用機会均等法>
労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことなどを理由とする解雇
<育児・介護休業法>
労働者が育児・介護休業などを申し出たこと、又は育児・介護休業などをしたことを理由とする解雇
引用:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
これらの法律は、労働者の権利を守り不当な扱いから保護するために存在します。
正社員を解雇するための3つの条件
法律で禁止されているケースを除き、正社員を解雇するには、会社は以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 客観的に合理的な理由があること
- 社会通念上相当であること
- 解雇の手続きが適切であること
これらの条件は厳格であり、会社が簡単に解雇できないように、労働者を保護する役割を果たしています。
客観的に合理的な理由があること
解雇理由が、客観的に見て合理的である必要があります。これは、誰が見ても納得できる理由でなければならないということです。例えば、業務上の能力不足や勤務態度の不良などが挙げられますが、単に「気に入らない」といった個人的な感情にもとづく理由は、合理的な理由とは認められません。
社会通念上相当であること
解雇理由が合理的であるだけでなく、社会通念上相当である必要もあります。これは、解雇という処分が、その理由に対して重すぎないかという観点から判断されます。例えば、軽微なミスを繰り返す従業員を解雇することは、社会通念上相当とはいえません。
解雇の手続きが適切であること
解雇の手続きが法律や就業規則に則って適切におこなわれている必要があります。具体的には、解雇予告、解雇理由の明示、解雇予告手当の支払いなどが挙げられます。労働基準法では、解雇日の30日前に解雇予告をおこなうか、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
引用:労働基準法|e-Govポータル
また、労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は速やかに交付しなければなりません。
解雇された場合の対処法
万が一、解雇されてしまった場合、泣き寝入りせずに適切な対処を取ることが重要です。ここでは、解雇された場合に取るべき4つのステップを解説します。
解雇理由証明書を請求する
まず、会社に対して解雇理由証明書を請求しましょう。解雇理由証明書には、解雇の具体的な理由が記載されています。解雇理由証明書を確認することで、解雇の理由が客観的に合理的であるかどうか、社会通念上相当であるかどうかを判断することができます。また、解雇理由証明書は、今後の交渉や労働審判、訴訟などの手続きを進めるうえで重要な証拠となります。
会社と交渉する
解雇理由証明書の内容を検討し、解雇に納得できない場合は、会社と交渉を試みましょう。交渉では、解雇理由の不当性や、解雇手続きの違法性などを主張し、解雇の撤回や、解決金の支払いを求めることができます。交渉は、弁護士や労働組合などの専門家に依頼することも1つの選択です。
【参考】解雇と退職金
解雇された場合、退職金は支払われるのでしょうか。退職金の支払いの有無は、会社の就業規則や退職金規程に定められています。一般的に、普通解雇の場合は、自己都合退職と同様に退職金が支払われます。しかし、懲戒解雇の場合は、会社の就業規則や退職金規程に記載があっても、退職金が減額されたり不支給となるケースがあります。
退職金の金額は、勤続年数や給与額などによって異なります。退職金の計算方法や、支払い時期などについても、就業規則や退職金規程に定められていますので、確認しておきましょう。
まとめ:正社員をクビになる可能性があるなら転職を検討することも1つの選択
正社員の解雇は、法律によって厳しく制限されています。会社が不当な解雇をおこなった場合、解雇は無効となる可能性があります。もし、解雇されてしまった場合は、泣き寝入りせずに、まずは解雇理由証明書を請求し、解雇の理由や手続きに問題がないかを確認しましょう。
「正社員をクビになるかもしれない」と悩んでいる場合は、転職することも1つの選択です。自分に合った職場を見つけられれば、安心して働けるだけでなく充実した毎日を送れます。「やりがいを持てる仕事を見つけたい」とお考えの方は、ぜひ一歩を踏み出してみてください。