「正社員として勤務していたのに、会社からパートへの転換を勧められた。これって違法じゃないの?」「給料も下がるしどうすればいいんだろう?」 そんな悩みを抱えていませんか? 企業側の経営状況や個人の能力など、さまざまな理由から、正社員からパートへの雇用形態変更、いわゆる「退職勧奨」がおこなわれるケースはあります。
本記事では、「正社員からパートへの転換を勧奨された」という状況に直面した際に、まず知っておくべき基礎知識から、会社側の意図の見抜き方、違法性の判断基準、そして具体的な対処法まで解説します。自信を持って会社と交渉し、自身のキャリアを守るための知識と行動力を身につけて、退職で後悔しないようにしましょう。
退職勧奨とは?
まず、「退職勧奨」という言葉の意味を正しく理解することが重要です。退職勧奨とは、会社側が従業員に対し、退職を促す行為を指します。
退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。
引用:労働契約の終了に関するルール|厚生労働省
解雇とは異なり、あくまで従業員の「合意」にもとづいて雇用契約を終了させることを目的としています。一見すると、会社都合による一方的な解雇を避けるための、穏便な手段のように思えるかもしれません。しかし、退職勧奨の裏には、さまざまな会社側の思惑が隠されていることもあります。
会社が正社員に対してパートへの転換を勧める理由
なぜ会社は正社員に対してパートへの転換を勧めるのでしょうか?その背景には、主に以下の理由が考えられます。
- 経営状況の悪化
- 事業縮小や組織再編にともなう人員整理
- 従業員の能力不足
- 勤務態度が悪い、協調性がないなど問題のある社員への対応
これらの背景を理解することで、会社がなぜあなたにパートへの転換を勧めてきたのか、その真意を見抜くための手がかりとなります。
正社員からパートへの転換が違法となるケースもある
正社員からパートへの転換を提案することは、法律で禁止されている行為ではありません。社内の労働力を調整することを目的として、配置転換がおこなわれているためです。しかし以下の原則があるように、やり方によっては違法となる場合があります。
(労働契約の原則)
引用:労働契約法|e-Govポータル
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
就業規則に規定があったとしても、従業員の同意なしに転換させることは、労働契約法に違反する可能性があります。自身の状況が違法の可能性があると感じた場合は、会社の担当者に相談することをおすすめします。
退職勧奨のサインと注意点
退職勧奨は、必ずしも明確な形で伝えられるとは限りません。会社側は、直接的な表現を避けることがあるためです。これらのサインを見逃さず、会社側の意図を正確に把握することが、適切な対応を取るうえで重要です。
以下に、退職勧奨のサインとして考えられる代表的なものを紹介します。
- 担当していたプロジェクトから不合理に外されたり、仕事を与えられなくなる
- 業績が下がっていないにも関わらず、人事評価が不当に低く評価される
- 会社から、自己都合退職を勧めるような発言がある
このようなサインに気づいた場合は、安易に反応せず、冷静に状況を分析することが大切です。いつ、誰から、どのようなことを言われたのか、詳細に記録し、メール、文書、録音データなど、退職勧奨の証拠となるものを集めておきましょう。
ただし、すべてのケースで会社が悪意を持って従業員に退職を促しているとは限りません。そのため、まずは同僚や家族、友人など、信頼できる人に相談し、客観的な意見を聞くことが重要です。冷静になっても会社の対応に問題があると判断できる場合は、会社と話し合いの場を設けてみましょう。
退職勧奨への正しい対処法
会社から退職勧奨を受けた場合、どのような対応を取るべきかは、個々の状況によって異なります。大きく分けて、「拒否」「交渉」「合意」という3つの選択肢があります。それぞれの選択肢について、詳しく見ていきましょう。
拒否する
退職勧奨を拒否する場合は、まず、「退職する意思はない」ということを、明確に会社に伝えることが重要です。口頭だけでなく、書面で伝えることも有効です。拒否の理由を具体的に説明することで、会社側も強引な退職勧奨を避けようとする可能性があります。
退職勧奨を拒否した場合、会社は一方的に解雇することはできません。解雇するには、法律で定められた正当な理由が必要となります。もし、会社が不当な解雇を強行した場合、解雇の無効を主張したり、損害賠償を請求したりすることができます。
交渉する
退職勧奨に応じる意思がある場合でも、会社からの提案をうのみにせず、退職条件について交渉することが重要です。交渉をスムーズに進めるためには、事前に十分な準備が必要です。自身の状況や会社の状況を分析し、交渉の材料を揃えておきましょう。また、交渉の際には、弁護士や労働組合などの専門家のサポートを受ける方法もあります。
合意する場合
会社からの提案に納得し、退職に合意する場合は、合意内容を必ず書面に残すようにしましょう。口約束だけでは、トラブルになる可能性があります。書面には、退職日、退職金、有給休暇の消化、再就職支援、秘密保持義務など、合意したすべての事項を明記するようにしましょう。
合意書にサインする前に、必ず内容をよく確認し、不明な点や納得できない点があれば、会社に確認するようにしましょう。場合によっては、弁護士などの専門家に合意書の内容をチェックしてもらうこともおすすめです。
【補足】退職勧奨に応じる前に確認すべき3つのポイント
退職勧奨に応じるかどうかを決める前に、必ず以下の3つのポイントを確認するようにしましょう。
- 退職後の生活費、再就職の可能性、失業保険の受給資格などを確認し、十分な生活設計を立てておく
- 会社から提示された退職条件(退職金、有給休暇の消化、再就職支援など)が、自身の状況に見合ったものかどうかを確認する
- 退職勧奨の過程で、違法な行為がなかったかどうかを確認する
退職勧奨に関する問題は、法律や労働に関する専門知識が必要となるケースが多く、個人で解決することが難しい場合があります。そのような場合は、弁護士、労働基準監督署などの専門機関に相談することをおすすめします。
- 労働基準監督署:会社が労働基準法に違反していないかを調査し、指導してくれる
- 弁護士:退職勧奨の違法性、損害賠償請求、労働審判、訴訟など、法的な側面からサポートしてくれる
これらの専門機関は、あなたの権利を守り、適切な解決策を見つけるための力強い味方となってくれるでしょう。
まとめ:正社員からパートへの転換には冷静に対処し、より良い未来へ
正社員からパートへの退職勧奨は、誰にとっても不安とストレスを感じるできごとです。しかし、冷静に状況を分析し、正しい知識を持って対処すれば、必ず納得のいく解決策を見つけることができます。本記事で解説した内容を参考に、会社側の意図を見抜き、ご自身の状況に合った選択肢を選んでください。必要であれば、専門家のサポートを受けながら、自信を持って会社と交渉し、ご自身のキャリアを守りましょう。
退職勧奨は、必ずしもネガティブな出来事ではありません。むしろ、新しいキャリアをスタートさせるためのチャンスと捉えることもできます。退職勧奨をきっかけに、本当にやりたいことを見つけたり、スキルアップを目指したり、起業に挑戦したりする人もいます。どのような選択をするにしても後悔のない決断をし、より良い未来に向かって力強く歩んでいきましょう。