ダブルワークを始めるにあたって、気になるのは「いくらまで稼げるのか?」という点ではないでしょうか。ダブルワークの収入には税金、確定申告、扶養といった要素が複雑に絡み合い、一見すると分かりにくい部分も多いです。そこで本記事では、正社員がダブルワークをする際に、収入がどこまでなら問題ないのか、税金や確定申告の注意点、扶養との関係などについて解説します。安心してダブルワークを始めるためにも、最後までお読みください。
年間の収入と税金の関係
ダブルワークで得た収入には、所得税と住民税がかかります。これらの税金は、年間の所得に応じて計算されるため、まずは年間の収入がいくらになるのかを把握することが重要です。
所得税は、年間の所得から所得控除を差し引いた金額に税率をかけて計算されます。所得控除には、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などがあり、これらの控除額によって課税対象となる所得が変わるという仕組みです。
一方、住民税は、前年の所得にもとづいて計算されます。所得割と均等割という2つの要素で構成され、所得割は所得に応じて、均等割は所得に関わらず一定額が課税されます。
正社員として働きながらダブルワークをする場合、給与所得と給与所得以外の所得(事業所得、雑所得など)が発生することがあります。これらの所得を合算して、年間の所得を計算する必要があります。
参考:所得税のしくみ|国税庁
参考:個人住民税|総務省
所得税と扶養の関係
ダブルワークを検討するうえで、まず意識すべきなのが「年収の壁」といわれるものです。これは、所得税法上の扶養に入っている配偶者が、扶養から外れるかどうかの基準となる金額です。
配偶者の合計所得金額が一定の金額以下であれば、配偶者は扶養に入ることができ、配偶者控除を受けることができます。しかし、配偶者の所得が一定の金額を超えると、配偶者控除の額が段階的に減少し、ある段階を超えると配偶者控除は受けられなくなります。
例えば、あなたが配偶者を扶養に入れている場合、ダブルワークで配偶者の年収が一定の金額を超えると、あなたの所得税額が増加する可能性があります。ダブルワークを始める前に、配偶者の年収が扶養の範囲内かどうかを確認し、税金への影響を考慮することが重要です。
社会保険との関係
税金だけでなく、社会保険(健康保険・厚生年金)にも注意が必要です。社会保険に加入すると、保険料を自己負担する必要があるため、手取り収入が減少する可能性があります。また、勤務先によっては、加入条件が異なる場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
確定申告は必要?不要?
ダブルワークをしている場合、確定申告が必要になるケースと不要なケースがあります。確定申告とは、1年間の所得を税務署に申告し、所得税を納める手続きのことです。確定申告が必要かどうかは、ダブルワークの種類や収入額によって異なります。以下に、具体的なケースを挙げて解説します。
確定申告が必要なケース
以下に該当する場合は、確定申告が必要です。
- 2ヵ所以上から給与所得を得ており、いずれの職場でも年末調整を受けていない場合
- 2ヵ所以上から給与所得を得ており、そのうち1ヵ所だけで年末調整を受けている場合
- 2ヵ所以上から給与所得を得ており、2ヵ所以上の職場で年末調整を受けた場合
- 年末調整をおこなった給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合
例えば、A社で正社員として働きながら、B社でアルバイトをしており、A社で年末調整を受けたものの、B社では年末調整を受けていないとします。この場合、B社でのアルバイト収入が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。判断に迷う場合は、自己判断をせず税務署など専門家へ相談しましょう。
確定申告の方法と注意点
確定申告が必要な場合は、以下の手順で手続きをおこないます。
- 源泉徴収票、所得控除に関する書類(生命保険料控除証明書、医療費控除の明細書など)など必要な書類を準備する
- 国税庁のホームページや確定申告ソフトを利用して、確定申告書を作成する
- 作成した確定申告書を、税務署に提出する
- 確定申告によって計算された所得税を納付する
確定申告をおこなう際には、以下の点に注意しましょう。
- 期限内に申告する:確定申告の期限は、通常、翌年の2月16日から3月15日まで。期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが課せられる可能性がある。
- 正確な情報を申告する:誤った情報を申告すると、税務署から指摘を受け、修正申告が必要になる場合がある
- 領収書や明細書を保管する:医療費控除など、所得控除を受けるためには、領収書や明細書を保管しておく必要がある
扶養から外れるとどうなる?メリット・デメリットを解説
ダブルワークによって収入が増え、扶養から外れると、税金や社会保険の負担が増加する可能性があります。しかし、扶養から外れることには、メリットもあります。
扶養から外れるデメリット
扶養から外れることの主なデメリットは、以下のとおりです。
- 扶養控除が受けられなくなるため、所得税などの負担が増加する
- 自身で社会保険に加入する必要がある場合、保険料を自己負担する必要がある
- 配偶者の扶養に入っている場合、配偶者の税負担が増え手取り収入が減少する可能性がある
例えば、あなたが配偶者の扶養に入っており、ダブルワークによって年収が一定の金額を超えたとします。この場合、あなたは配偶者の扶養から外れ、自身で国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。これにより、あなたの手取り収入が減少する可能性があります。また、配偶者は配偶者控除を受けられなくなるため、配偶者の所得税も増加する可能性があります。
扶養から外れるメリット
扶養から外れることの主なメリットは、以下のとおりです。
- 厚生年金に加入した場合、将来の年金受給額が増加する可能性がある
- 健康保険に加入した場合、病気やケガで働けなくなった場合や、出産した場合に、傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられる可能性がある
- 扶養の範囲内で働くことを意識する必要がなくなるため、より自由に働くことができ、収入を増やすことができる可能性がある
例えば、あなたがダブルワークによって厚生年金に加入した場合、将来の年金受給額が増加する可能性があります。また、病気で働けなくなった場合に傷病手当金を受け取ることができ、生活の安定につながる可能性があります。
ダブルワークで成功するための注意点
ダブルワークは、収入アップやスキルアップにつながる一方で、注意すべき点もあります。
勤務先の就業規則を確認する
まず、勤務先の就業規則でダブルワークが禁止されていないか確認しましょう。ダブルワークを禁止している会社もありますし、許可が必要な場合もあります。無断でダブルワークをすると、懲戒処分を受ける可能性もあります。
体調管理を徹底する
ダブルワークは体力的に負担が大きくなるため、十分な睡眠時間を確保しバランスの取れた食事を心がけるなど、体調管理を徹底しましょう。無理な働き方は、健康を害するだけでなく本業にも影響が出てしまう可能性があります。
スケジュール管理を徹底する
ダブルワークをする場合、スケジュール管理が重要です。本業と副業のスケジュールを把握し、無理のない計画を立てましょう。また、急な予定変更にも対応できるよう、余裕を持ったスケジュールを組むことも大切です。
本業に支障が出ないようにする
ダブルワークは、あくまで本業を補完するものです。本業に支障が出ないように、時間配分や仕事の量を調整しましょう。
まとめ:賢くダブルワークで収入アップを目指そう
正社員のダブルワークは、収入を増やすための有効な手段ですが、税金や社会保険、確定申告など、注意すべき点も多くあります。本記事で解説した内容を参考に、ご自身の状況に合わせて賢くダブルワークを始めましょう。