有給休暇の金額はいくら?計算方法や注意点など損をしないための知識

正社員として働くうえで、有給休暇を取得することは誰しもあると思います。せっかく休むなら、正当な給与を受け取りたいと思うのは当然です。しかし、「有給休暇の金額ってどうやって計算するの?」「いつもと同じ金額がもらえるの?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。有給休暇の金額は、雇用形態や会社の就業規則によって計算方法が異なり、場合によっては損をしてしまう可能性もあります。

そこでこの記事では、有給休暇の金額に関する基本的な知識から、具体的な計算方法、そして注意点までを解説します。「安心して有給休暇を取得したい」とお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。

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有給休暇の金額を左右する3つの賃金支払い方式

有給休暇を取得した日に支払われる給与の計算方法は、労働基準法第三十九条で定められています。それにより、企業は以下の3つの方法のなかから賃金を計算します。

  1. 通常の賃金を支払う
  2. 平均賃金を支払う
  3. 標準報酬日額を支払う(労使協定が必要)

どの方法が採用されているかによって、有給休暇の金額は変わってくるため、まずはこの3つの方法を理解することが重要です。それぞれの計算方法やメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。

1. 通常の賃金を支払う方法

まず紹介するのは、有給休暇を取得した日も通常勤務日と同じように賃金を支払う方法です。月給制の場合は、月給額をそのまま支払えば良いので、シンプルで分かりやすいのが特徴です。例えば、月給30万円の方が有給休暇を1日取得した場合、その月の給与は30万円から減額されることなく支給されます(一部手当は除きます)。

時給制や日給制の場合は、その日の労働時間や労働日数に応じて支払われる賃金を、有給休暇を取得した日についても支払います。例えば、時給1,500円の方が8時間勤務した場合、有給休暇を取得した日も12,000円(1,500円×8時間)が支払われます。

しかし、企業によっては、皆勤手当や精勤手当などが支給されている場合、有給休暇を取得するとこれらの手当が減額または支給されなくなるケースがあります。就業規則を確認し、有給休暇を取得することでどのような影響があるのかを把握しておくことが重要です。

2. 平均賃金を支払う方法

平均賃金を支払う方法とは、過去3ヵ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総日数で割って1日あたりの金額を算出し、それを有給休暇を取得した日数分支払う方法のことです。この方法は、月によって収入が変動する方や、残業代が多い方にとって有利になる場合があります。なぜなら、平均賃金を計算する際に、残業代や各種手当も含まれるため、通常の賃金よりも高くなる可能性があるからです。

平均賃金の計算式は以下のとおりです。

  • 平均賃金 = 過去3ヵ月間の賃金総額 ÷ 過去3ヵ月間の総日数

例えば、過去3ヵ月間の賃金総額が90万円で、総日数が90日の場合、平均賃金は10,000円となるイメージです。この条件で有給休暇を5日取得した場合、50,000円(10,000円×5日)が支払われることになります。

ただし、平均賃金を計算する際には、以下のものが賃金総額から除外されます。

  • 臨時に支払われた賃金(結婚祝い金、私傷病手当など)
  • 3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 現物給与(食事、住宅など)

また、過去3ヵ月間の労働日数が少ない場合、平均賃金の計算方法が異なる場合があります。例えば、病気やケガで休業していた期間がある場合、その期間は平均賃金の計算から除外されます。詳細な計算方法については、就業規則を確認するか、会社の担当部署に問い合わせるようにしましょう。

3. 標準報酬日額を支払う(労使協定が必要)

健康保険に加入している従業員に対して、標準報酬月額を30で割った金額を1日あたりの賃金として支払う方法もあります。

  • 標準報酬日額=標準報酬月額÷30

標準報酬月額とは、社会保険料を計算する際に用いられるもので、給与などの報酬を一定の幅で区切った等級に当てはめて決定されます。

この方法は、社会保険料を納めている従業員にとっては、比較的安定した金額を受け取ることができるというメリットがあります。しかし、残業代や手当が多い方にとっては、平均賃金を支払う方法よりも金額が低くなる可能性があります。

標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の給与をもとに決定され、9月から翌年8月まで適用されます。そのため、有給休暇を取得する時期によっては、受け取る金額が変わる可能性があります。ご自身の標準報酬月額を確認したい場合は、給与明細や健康保険証で確認することができます。

参考:標準報酬月額は、いつどのように決まるのですか。|日本年金機構

【雇用形態別】有給休暇金額の違い

有給休暇の金額は、雇用形態によっても異なります。正社員の場合は、月給制であることが一般的なため、通常の賃金を支払う方法が採用されている傾向がありますが、パート・アルバイトの場合は、時給制であることが多いため、平均賃金を支払う方法が採用されていることがあります。それぞれの雇用形態における有給休暇の金額について、詳しく見ていきましょう。

正社員の場合

正社員の場合、月給制が一般的であるため、有給休暇を取得しても月給が減額されることは基本的にありません。ただし、前述したように、皆勤手当や精勤手当などが支給されている場合、有給休暇を取得するとこれらの手当が減額または支給されなくなることがあります。

また、一部の企業では、フレックスタイム制や裁量労働制を導入している場合があります。これらの制度を導入している場合、有給休暇の取得方法や金額の計算方法が異なることがありますので、就業規則を確認するようにしましょう。

パート・アルバイトの場合

パート・アルバイトの場合、時間給制が一般的であるため、有給休暇を取得した時間数に応じて賃金が支払われます。多くの企業では、平均賃金を支払う方法を採用しており、過去3ヵ月間の賃金をもとに1時間あたりの平均賃金を算出し、それに有給休暇を取得した時間数をかけて金額を計算します。

例えば、過去3ヵ月間の賃金総額が30万円で、総労働時間が200時間の場合、1時間あたりの平均賃金は1,500円です。この条件で有給休暇を8時間取得した場合、12,000円(1,500円×8時間)が支払われることになります。

労働基準法では、以下の条件を満たすパート・アルバイトにも有給休暇が付与されることが定められています。

  • 雇入れの日から6ヵ月継続して勤務していること
  • 全労働日の8割以上出勤していること

有給休暇の付与日数は労働時間や労働日数によって異なりますので、会社の担当部署に確認するようにしましょう。

参考:年次有給休暇の付与日数は、法律で決まっています|厚生労働省

有給休暇の金額が6割になるケースはあるのか?

「有給休暇の給与が6割になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、企業が平均賃金方式を採用している場合に起こりうるケースです。平均賃金は、過去3ヵ月間の賃金総額をもとに算出されるため、残業が少なかったり、欠勤が多かったりすると、平均賃金が通常の賃金よりも低くなることがあります。その結果、有給休暇の給与が6割程度になることもありえます。

最低賃金を下回る場合は違法

有給休暇の給与が最低賃金を下回る場合は違法です。労働基準法では、有給休暇を取得した日についても、最低賃金以上の賃金を支払うことが義務付けられています。もし、有給休暇の給与が最低賃金を下回る場合は、会社に是正を求めることができます。

独自の減額は違法

会社が独自のルールを設けて、有給休暇の給与を減額することも違法です。有給休暇は労働者の権利であり、それを理由に不利益な扱いをすることは許されません。

また、「有給休暇の取得を拒否される」「有給休暇を取得するとシフトを減らされる」など、違法な扱いを受けるケースがあります。有給休暇は、正社員だけでなく、条件を満たしたパート・アルバイトなどすべての労働者に認められている権利です。もし、違法な扱いを受けていると感じたら、労働基準監督署などに相談することを検討しましょう。

まとめ:有給休暇の金額を正しく理解し活用しよう

この記事では、有給休暇の金額に関する基本的な知識から、具体的な計算方法、そして注意点までを解説しました。有給休暇の金額は、雇用形態や会社の就業規則によって計算方法が異なり、場合によっては損をする可能性もあります。この記事を参考に、ご自身の有給休暇の金額を正しく理解し活用してください。

有給休暇は、労働者の権利であり、心身のリフレッシュを図るために重要なものです。企業は、労働者が有給休暇を取得しやすい環境を整備し、労働者は積極的に有給休暇を取得することで、より充実したワークライフバランスを実現しましょう。